消費が「モテ」へつながる時代は終わりつつある、一部を除き
ただし、今のアラサー世代以下から確実に起きている変化としていえるのは、「消費」と「モテ」の関連性が薄くなってきた事実だ。バイクや高級時計など、趣味へ無限に消費する若者はいまだに一定数存在する。ただ「消費すればモテる」という価値観は薄れてしまった。だから若者は高級品を購入しても、その価値が理解される仲間内でしか披露しない。恋人候補に見せようものなら「浪費家」の烙印を押され、いっそモテなくなる恐れすらあるからだ。
ただし、このロジックが通じるのは年収1,000万円前後の若者までである。年収1,001万円~億単位の富裕層にとって、いまだに消費は「モテアピール」として君臨し続けている。たとえば平均単価が100万円台後半の高級時計ブランド売り場を見ていると、20代の顧客を見つけることも難しくない。バブリーな時計の外観にふさわしく、身に着けた男性は女性を同伴している。
車でもフェラーリやマクラーレンのVIPパーティでは、急に20代も女性連れの比率が高くなる。年収2,000万円を超える外資系投資銀行員の合コンでは、惜しげもなく会員制バーが利用される。「消費=モテ」というバブル感覚は富裕層に限定はされるものの、いまだに息づいているのだ。
多くの若者にとっては「無料サービス」の比重が大きくなる
もちろん、前述の富裕層は若者のごく一部にとどまる。だからこそ多くの若者にとっては、ほとんどのサービスを無料で使えることが重要な価値となる。
期間限定ならば有名マンガを無料で読めるアプリ「LINEマンガ」は20~30代から支持され1,600万ダウンロードを達成した。「ユーチューバー」の単語で一躍全世代への知名度を上げた動画サイト「YouTube」も基本無料である。アップロードされたアーティストの公式映像を見つつ、カラオケの練習をする若者は多い。その成果として人気曲『打上花火』(DAOKO × 米津玄師)はYouTube上で驚異の再生回数1億回を達成している。
無料であることは「ラッキー、お得」から「当たり前」に変化した。それは決してネガティブな側面ばかりを持つものではない。無料アプリの収入源は広告が主であり、それは「若者以外」が新しい消費を喚起するコミュニケーションの機会でもある。
いちはやく若者が使っている道具を理解し、刺さる広告を届けられるか。それが若者の、ひいては未来の「おっさん・おばさん」世代の消費を運命づけるだろう。
(文=トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事)