――「次に会うべき人」を教えてくれる機能とは、どういったものなのでしょうか。
富岡 16年に、名刺のデータ化やデータの分析・活用を行う専門部門「DSOC(Data Strategy & Operation Center)」を設立しました。画像処理・機械学習のスペシャリストやデータサイエンティストなど、20名が在籍するR&D(研究開発)チームを擁しています。
そのDSOCから生まれた新機能が、「スマートレコメンデーション」です。これは、ユーザーの名刺交換に関する地域・業種・交換先部署などの傾向を分析し、社内に埋もれている名刺から「次に会うべき人」を推薦する機能です。これにより、ビジネスにおける出会いは「探しに行くもの」ではなく「AIが教えてくれるもの」に進化します。
たとえば、「Sansan」から「あなたにおすすめの名刺があります」という通知が来て、クリックすると「会うべき人」の名前や業種、所属企業の規模などが提供されます。そこで「興味あり」をクリックすると、同僚など、その名刺の持ち主に通知が届き、持ち主が「名刺の共有」を承認すれば、2人の間で名刺情報が共有されます。今は、ユーザーごとの「興味あり」「興味なし」のデータなどを学習してAIの精度を高めている段階です。
テレビCMで「それさぁ、早く言ってよ~」というセリフがありますが、まさにあの状況を先回りする機能といえます。ビジネスの出会いは経験と勘に頼ることが多かったですが、社内に埋もれている人脈をひとつも無駄にせず、次に会うべき人物を提案することで、新たなビジネスチャンスにつなげていきます。こうした動きが、働き方改革にも寄与すると考えています。
――働き方改革のポイントは中小企業ともいわれますが、導入状況はいかがでしょうか。
富岡 導入企業は約7000社ですが、そのうち8割は中小企業です。ここ2年くらいで、大企業からのニーズも増えてきています。これまでは東京を中心とした中小企業が主でしたが、関西や名古屋など西日本からの引き合いも増えており、さらに全国規模で拡大していきたいと考えています。
「早く言ってよ~」の今後はどうなる?
――ストーリー仕立てのテレビCMは、ビジネスパーソンの悲哀を感じさせます。物語が展開するにつれて、「早く言ってよ~」のセリフも変わっていくのでしょうか。
富岡 今は第5弾で、岩松了さん演じる社長が初登場し、社長室でゴルフをしているシーンが流れています。
実は、バージョンを重ねるなかで働き方改革をテーマに検討したこともありますが、働き方改革はまだ道半ば。ちょっとしつこいかもしれませんが、「早く言ってよ~」はまだまだ続くと思います。