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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

将来をつぶされた加害選手も被害者だ

 企業や有名人の不適切行動に関する謝罪会見は多く、最近ではTOKIOの山口達也メンバーのわいせつ行為をめぐる謝罪会見が記憶に新しい。そうした会見のたびに危機管理専門家やコンサルタントが実施方法やメッセージの出し方などについて、批判的な指摘を行っている。今回の宮川選手の謝罪会見は、ここ数年でもっとも成功した例だ。

 成功した1つ目の要因は、会見の趣旨について「謝罪をしたい」そして「真実を明らかにしたい」とはっきりさせ、それを何度も繰り返したことだ。2つ目は、方法論として「陳述書」という書面をあらかじめ用意して、これを読み上げるというかたちをとったことだ。それは、問題が起きた試合の前の段階から、日付入りの時系列で起きた事実と自らの感想が書かれており、登場人物の個人名も記され、十分に説得力があり、人々が経緯をよく理解できた。

 3つ目の理由として、宮川選手が「そもそもの指示があったにしろ、やってしまったのは私です。人のせいにするのではなく、やってしまった事実がある以上、私が反省することだと思います」「自分で判断できなかった、自分の弱さだと思う」などと明言して、他の誰も非難しようとしなかったことだ。記者からの質問で、内田監督や井上奨コーチへの感想を何度も求められた。それは、監督らへの非難コメントを誘導するようなものでもあったが、宮川選手は監督、コーチ、あるいはアメフト部を非難することなく、「監督とコーチ陣からのプレッシャーがあっても、自分で正常な判断をすべきだった」などというコメントに終始した。

 また、日大アメフット部や内田監督らへの思いを尋ねる質問については、「僕は今日ここに来たのは謝罪をするため、真実を話すために来たので、今後のチームのことなどは僕の口からいうべきではないと思います」と回答。さらに自身の今後について聞かれると「もちろん、アメフットを続けていくという権利はないと思っていますし、この先、アメフトをやるつもりもありません」と競技復帰を明確に否定した。TOKIOの山口達也メンバーが先の謝罪会見で「席があれば、またTOKIOとしてやっていけたらなあって」と未練がましいことを口走ってしまい、他のメンバーからさえバッシングされたのとは大きな違いだった。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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