年商7億円、ココナッツオイルブームを仕掛けたママ社長の成功の秘訣…「バカシステム」から脱却せよ
3カ月ほどたち何もしない生活に飽きた荻野さんは、フリーランスで仕事を再開する。しかし、「誰かの役に立っている」という手応えを得ることはできなかった。
そして2011年、29歳の時に娘を出産し、前述のようにお菓子ブランド「ブラウンシュガーファースト」を立ち上げる。
子どもに安心して食べさせられるお菓子をつくるという仕事は、長年探し続けてきた「人生をかけてやりたいこと」だった。あちこちに頭をぶつけながら探し続けてきた天職を、ようやく見つけたのだ。
「創業後は順風満帆でしたが、それでも“どうせ私なんて”という苦しい気持ちを抱えていました。どこに原因があるのか考えてみたら、私の役割に悩みがひも付いていることがわかりました。嫁という役割です」(同)
夫を立て、内助の功が求められる嫁としての役割に、ワクワクも幸せも感じられないとわかった荻野さんは、夫に正直な話を打ち明け、妻という役割を降りることにした。長年のモヤモヤが消えたことで、かえって元夫との関係も良くなったという。
女性活躍推進政策で「バカシステム」は変わらない
軍資金20万円で立ち上げた小さなお菓子屋さんは、ココナッツオイルとの運命的な出会いによって瞬く間に成功し、売り上げ7億円に達する。当然、仕事は多忙となり、今度は「母親」としての役割に向き合わざるを得なくなる。
「創業当時から、子どもはお母さんがどれだけ目をかけたかで決まるとか、子どもを犠牲にしてまで働く必要があるのかなどと言われて、ママ失格なのかと悩む日々でした。ところが、ココナッツオイルの原料をフィリピンへ探しに行ったとき、フィリピンのお母さんは、子どもを人に預けて外で働いていても、親子関係がちゃんと育まれていることを知ったのです。
お母さんが子育てをサボっているとか、子どもに悪い、という価値観もありません。子育てについての価値観がひとつじゃないんだと学びました」(同)
荻野さんは、女性に関する多様な価値観を知ることで、自分の本音を大切にしたほうがいい、ということに気づいた。その気づきは、会社の経営にも役立っている。
子どもがぐずったなら遅刻してもいい、できないことは最初から宣言してしまう、というように、これまでにない「ルール破り」の経営で、社員に自由で柔軟な発想を育てている。
「あるママ社員が、お子さんから『早く大人になりたい』と言われたそうです。どうしてと聞くと、『ママが仕事をしているのが楽しそうだから』と答えたそうです。私は思わず涙が出てしまいました」(同)