食品スーパー化するドラッグストア
コスモス薬品のように、食品を強みにしようとしているドラッグストアは増えている。
たとえばウエルシアHDがそうだ。17年度の商品販売額に占める食品販売額の構成比は22%で割合は比較的大きい。近年は健康を意識した食品のプライベートブランド(PB)を充実させることで食品部門を強化している。たとえば、山崎製パンと共同開発した「糖質を抑えたクロワッサン」のほか、「脂肪0%ヨーグルト」「淡路島産玉ねぎを使ったハンバーグ」といったPB商品を販売している。17年度の売上高に占めるPBの構成比は5%だが、品ぞろえを充実させることで集客を図る考えだ。
ツルハHDも食品販売を強化している。17年度に198店で店舗の改装を実施したが、そのうちの4割にあたる79店で食品売り場の拡充を行った。こういった食品強化策が功を奏し、13年度の商品販売額に占める食品販売額の構成比は13%に過ぎなかったが、17年度には20%まで拡大している。
ドラッグストアが食品の販売に力を入れるのは集客を図るためだ。中核商品である医薬品は購買頻度が高い商材とはいえないため、医薬品だけで集客を図ることは難しい。一方、食品は購買頻度が高い商材のため、目玉商品にすることで集客を図ることができる。多くのドラッグストアは、値下げした食品を目玉商品として打ち出して集客を図り、利益率が高い医薬品などを“ついで買い”してもらって収益を確保するという戦略をとっている。医薬品販売で得られる利益を食品の値下げの原資にしているというわけだ。
これは医薬品を扱えるドラッグストアならではの戦略といえるだろう。近年、ドラッグストアがコンビニエンスストアやスーパーマーケットを脅かしているといわれているが、ドラッグストアはコンビニやスーパーよりも安値で食品を販売しているケースが少なくないためだ。
ドラッグストアの強みはそれだけではない。24時間営業が拡大しているほか、弁当・総菜の取扱店や、公共料金などの支払いができる収納代行サービスを取り扱う店舗が増えている。こうしたことでドラッグストアのコンビニ化が進んでおり、高まった利便性も新たな武器となっている。
食品の強化などで成長を続けるドラッグストア業界。一方でこうした動きと一線を画しているのがマツキヨHDだ。食品販売にはあまり力を入れておらず、17年度の小売事業商品販売額に占める食品販売額の構成比は10%にすぎず、化粧品が40%と高い水準にある。主力のマツモトキヨシは都市部を中心に出店を重ねてきたため、化粧品と相性がいい女子高校生などの若い女性や訪日外国人などを取り込むことができた。今後も化粧品と医薬品を軸とする戦略に変わりはなさそうだ。
企業によって方向性がやや異なるが、いずれにしても大手各社が打ち出している戦略は消費者に受け入れられており、それぞれが大きく成長している状況にある。現状大きく突出している企業はなく、当面は団子レースが続くだろう。果たして、どの企業が覇権を握ることになるのだろうか。今後の展開から目が離せない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。