ユニクロとの差
消費者の嗜好の変化も、しまむらにとって不利に作用した。近年は着回しのきくベーシック商品の人気が高まっており、そういった風潮のなかで奇抜なファッションは敬遠されやすい。コラボ商品は最たるものといえるだろう。そのため、以前にも増してコラボ商品以外でのキラーコンテンツの開発がしまむらには求められていた。
こうした流れを受けてしまむらは、15年ごろからプライベートブランド(PB)の「CLOSSHI(クロッシー)」と「FREUDE(フロイデ)」においてベーシックアイテムの展開を強化するようになった。そして、ユニクロのように1種類当たりの販売量を増やす戦略に舵を切った。加えて、先述したレイアウト変更戦略と組み合わせてベーシックアイテムの販売増を狙ったわけだが、残念ながら、15年と16年にヒットした「裏地あったかパンツ」と「素肌涼やかデニム&パンツ」に続くヒット商品を生み出せていない。
ベーシックアイテムでヒット商品を生み出せていないのは、ファッション性も関係している。たとえベーシックアイテムといえども、ダサければ買ってはもらえない。ベーシックアイテムにおしゃれ感は必要ないが、洗練されていなければならない。残念ながら、しまむらにはそれが欠如しているのが実情だ。
一方、競合のユニクロは主にベーシックアイテムを扱っているが、しまむらなどにはない洗練さがある。ユニクロはしまむら同様、郊外を中心に出店を重ねて成長してきたが、1998年に若者のファッションの流行発信地である東京・原宿に出店したのを皮切りに、その後は次々と都心に出店して洗練されたファッションブランドであると印象付けることに努めてきた。こうした立地戦略のほか、実力のあるデザイナーを起用して商品開発を行ったり、有名人を起用した宣伝広告を行うなどして洗練さに磨きをかけてきた。こうして培ってきた洗練さがユニクロの強さのひとつとなっている。
その結果、苦戦するしまむらとは対照的に、ユニクロの国内販売は好調だ。17年9月〜18年5月の既存店売上高は前年同期比7.5%増と大幅な増収を達成している。
苦戦が続くしまむら。成長を再度実現するためには、ファッション性を上げるなどしてもう一皮剥ける必要があるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。