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三越伊勢丹は「伊勢丹新宿本店」主義の限り復活なし…札幌丸井三越が売上増の異変に光明

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 足許、わが国経済は外需頼みの状況にある。三越伊勢丹も同じだ。従来と違うのは、中国人を中心とする訪日外国人の関心が、首都圏での買い物だけではなく、地方での体験などに変化しているということだろう。

 18年分の北海道内の路線価は、平均して1.1%上昇した。これは3年連続の上昇だ。海外の視点からわが国の地方を見た場合、さまざまな魅力があるからにほかならない。三越伊勢丹が、この変化を持続的な収益源につなげることができれば、同社の経営には相応の変化が現れるだろう。そのためには、同社が従来の発想から脱却することが必要だ。

脱“百貨店

 18年3月期の決算説明資料のなかで、三越伊勢丹は、都市部での百貨店の魅力の発信を重視している。今後の取り組みとしては、不採算店舗の閉鎖など事業構造の転換、新宿と日本橋の基幹店舗の再活性化など、従来から強調されてきた内容が目立つ。

 三越伊勢丹にとって理想の百貨店ビジネスは、新宿の伊勢丹本店と、日本橋の三越本店ということなのだろう。その店舗を中心に売り上げが伸び悩んでいるにもかかわらず、同社はかつての伊勢丹の成功体験に浸っているといえる。

 三越伊勢丹のライバルであるJ.フロントリテイリングは、新しい取り組みを進めている。17年にオープンしたGINZA SIX(ギンザシックス)が良い例だ。ギンザシックスは百貨店ではなく、複合型の商業施設だ。専門店、飲食店に加え、オフィス空間も提供している。

 三越伊勢丹にも、発想の転換が必要だ。それは、同社が郷愁を感じる“百貨店”ビジネスから脱却することといえる。同社がブランド発掘等の伊勢丹のノウハウ、三越のおもてなしの接客を強みと考え、それを武器に成長を目指すのであれば、外商ビジネスの変革が求められる。富裕層などを対象とする外商には、顧客の“ほしいもの”を提案し、それを収益につなげる役割がある。それは、他の小売業態にはない百貨店ならではのビジネスだ。

 三越伊勢丹に期待したいのは、外商ビジネスの強みを生かし、海外の富裕層向けのマーケティングを強化することだ。わが国の地方の自然環境、食などと合わせて、その地の百貨店での買い物を楽しむ魅力を伝えてはどうか。三越伊勢丹の店舗ごとの売上高の推移を見ていると、海外からの需要を喚起し、取り込むチャンスはあるだろう。三越伊勢丹は海外事業の強化も重視している。その一環として、海外の富裕層へのマーケティングを強化し、自ら需要を喚起する発想があってもよい。

 反対に言えば、それくらいの大胆な取り組みを進めなければ、同社の業績の回復と拡大は難しいかもしれない。少なくとも、株価の動向を見る限り、市場参加者は同社の長期的な成長性に疑問を強めているようだ。三越伊勢丹が従来の発想から脱却できるかどうかが、当面の業績を考えるポイントとなるだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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