抗議を受けたX社の対応
頭にきた山田さんは、X社の担当者に電話し、「詐欺のような契約だから、キャンセルしたい。もちろん、車の買い取りがクーリングオフの対象でないことは認識している。あくまで、詐欺による契約だから取り消したい」と伝えた。担当者が「どういうことでしょうか?」と聞いてきたので、山田さんはこう応えた。
「車を急いで処分したいという私をせかして、まず、どんどん電話が掛かってくると言って不安を煽った。そして、廃車には時間がかかると嘘を言った。さらに、リサイクル料金分であるにもかかわらず、特別に1万円という額をつけると言う一方、自動車税や重量税については説明もしなかった。キャンセル料を請求するなら、してください。徹底して争います」
すると担当者は「それは申し訳ありませんでした」と言うので、山田さんは「騙そうとしたことを認めるのか?」と聞くと、「申し訳ございません」と繰り返すばかりであった。「全面的に非を認めるなら、契約はなしになった旨のメールをほしい」と言って電話が終わり、担当者から「キャンセルになります。よろしくお願い致します」という簡単なメールが来て、X社とのやりとりは終了した。
結局、山田さんはディーラーと相談して、愛車を4万円強で売却した。
事前の情報収集が肝心
ちなみに山田さんは後日、友人の危機管理コンサルタントにこの話をしたところ、以下の教訓を教えてくれた。
(1)業者の手口
・早く決めないと煩わしい状態になりそうな旨を顧客に伝え、不安を煽る。
・他の電話に出させないため、口実をつけて電話を切らせないようにする。
・電話で一気に話をつけようとする。
・相手の無知に付け込んで、嘘をついたり、すべき説明をしない。
・契約書の詳細内容を読む時間を与えない。
・安易にキャンセルされないように、キャンセル料については触れる。
(2)山田さんのうかつだった点
・売買契約に対する意識が低過ぎた。
・少しネットで調べれば、車の買い取りについてトラブルが起こっていることは容易に知ることができるのに、事前に下調べをしなかった。
・査定額を比較したいと思ってサイトを利用したのに、煽られて当初の目的を見失い、契約を急いだ。
・まず、普段付き合っているディーラーなどに相談すれば、リサイクル料金や自動車税などについてはもちろん、それなりの相場も知ることができたのに、しなかった。つまり、有識者にアドバイスを求めなかった。