公正取引委員会は8月23日、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀行の経営統合を承認することを決めた。両社は2019年4月に経営統合する。
両社は16年2月に統合を発表した。ふくおかFGは長崎県内第2位の親和銀行を傘下に持つため、首位の十八銀行と統合すると県内の貸出金シェアが7割まで高まる。離島を含めて、ほぼ100%になる地域がかなり出る。公取委は銀行間の競争がなくなると貸出金利が高止まりして融資先企業が不利になることを懸念し、「このままでは承認は難しい」と銀行側に伝えた。
それを受けて両社は17年7月に統合計画を無期延期。公取委は今年4月、戦後初となる「独占禁止法に基づいた統合差し止め命令の発動も辞さない」と当事者に伝えていたといわれている。公取委は、統合承認の条件として、「懸念が解消される措置を取るよう」求めた。
そこで、ふくおかFGと十八銀行は、貸し出し債権を他の金融機関に譲渡することでシェアを下げると決断。5月から長崎県内の全融資先、1万6000社の意向を調査し、さらにおよそ20の金融機関に融資の肩代わり(受け入れ)を打診。長崎県内に店舗を持つ地銀を中心に受け入れを要請した。債権譲渡額は1000億円弱となる。
西日本シティ銀行と長崎銀行を傘下に持つ西日本フィナンシャルホールディングスや、肥後銀行と鹿児島銀行を持つ九州フィナンシャルグループ、さらには佐賀銀行などが、受け入れに前向きだった。ただ、貸出金利など、条件面で合わないケースは除外される。
両社は債権譲渡に加え、統合後に貸出金利が上がらないよう第三者が監視する枠組みを設けることを含めた統合計画の修正を、8月21日に公取委へ提出していた。
金融庁と公取委のせめぎ合い
ふくおかFGと十八銀行の統合問題では、地方銀行の再編を後押しする金融庁と、独占禁止法の“番人”を自任する公取委のせめぎ合いが続いた。
4月18日付ロイター通信は「公取委は経営統合を検討しているふくおかフィナンシャルグループと十八銀行に対し、長崎で発足予定の新銀行のシェアを引き下げるための実効的な措置を講じない限り、統合を認めず、独占禁止法に基づく排除措置命令を出す方向で検討に入った」と報じた。
排除措置命令とは、独禁法違反と認定した事業者に対して公取委が出す命令のことだ。この命令が出ると、ふくおかFGと十八銀は経営統合できなくなる。