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安倍政権、ふくおかFGと十八銀行の統合をゴリ押し…揺らぐ銀行間の競争原理

文=編集部

 金融庁、政府は“公取委包囲網”を築く。

 金融庁の有識者会議は4月11日の報告書で、この案件を詳細に分析。「急速な人口減で複数行が競争を持続できない地域があり、経営余力があるうちに統合を認めるのが望ましい」とした。また、公取委が審査する現状を改め、金融庁も含め総合的な競争政策のあり方を検討すべきだと提言した。単純化して言えば、「金融庁が銀行の合併を審査する」ということだ。「経済産業省が自動車メーカーの合併を審査するようなもの」(有力地銀の幹部)といった声が聞こえてくる。

 これに関連して、政府は6月15日に公表した未来投資戦略案の中で、地方の人口減など経済社会構造の変化に対応した競争政策のあり方を検討し、19年3月までに結論を得ると明記した。

 これに公取委の杉本和行委員長は猛反発した。杉本委員長は元財務事務次官で、13年3月に公取委委員長に就任した。公取委はかつて“吠えない犬”と揶揄されたが、杉本氏は独禁法の番人として原理原則を貫いた。金融庁が是認する、ふくおかFGと十八銀行の統合にも杉本氏は、安易に首を縦に振らなかった。

 杉本委員長は7月18日の会見で、地銀の再編に関連し金融庁側が公取委の審査手法に疑問を投げ掛けた報告書を出したことについて、「競争を阻害する合併について、金融庁がどう考えているのかという見解がまったくなく、納得できない。納得できないものについては対応しきれない」と一蹴した。

 政府の未来投資戦略案による独禁法の改正提言についても、「競争を制限するような企業統合には排除命令、というのが世界的な標準だ。私どもは、今の競争政策や独占禁止法を変える必要があるとは思っていない」と言い切った。

 ところが、その2週間後の8月1日、新聞各紙は「公取委、統合承認へ」と一斉に報じた。どういう背景があるのか。

 ふくおかFGと十八銀行が「他行への債権譲渡で、問題視されてきたシェアの高さが緩和された」とする報告書を公取委に出したことを受けて、「公取委はこれで競争環境が維持できると判断するだろう」との“落としどころ”を見つけ、各紙は「go」サインを出したとみられる。リークがあった可能性も否定できない。

 金融界では、「首相官邸が公取委をねじ伏せた」と受け止める向きも多い。
(文=編集部)

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