「茨城のコーヒー屋」を知ってほしい
「東京いちごシェイク」
一方、現在のカフェ業界で一目を置かれているのが、茨城県に本店がある「サザコーヒー」だ。高品質のコーヒーにこだわり、南米コロンビアには「サザ農園」という直営農園も持つ。昨年には、コーヒー職人であるバリスタの国内選手権「JBC(ジャパンバリスタチャンピオンシップ)」決勝進出者6人のうち3人が同社社員だったことも、業界の注目を浴びた。
「サザコーヒーは茨城県のお客さまに育てられてきました。長年、茨城のみで店を展開していましたが、2005年に品川駅構内の『エキュート品川』に出店して以来、東京都内に3店展開しています。都内の店は“茨城のコーヒー屋”である当店を知っていただく役割もあります」
サザコーヒー創業者の鈴木誉志男会長は、こう説明する。同社は1969年に鈴木夫妻が1店から始め(現在は妻の美知子氏が社長)、茨城県内に9店、首都圏に4店を展開する。7月13日に「KITTE丸の内店」を出店したばかりだ。こちらの店舗戦略は、品川店を手がけた長男の太郎氏(副社長)が陣頭指揮をとる。太郎氏は、KITTE店の特徴を次のように語る。
「1杯450円からあるコーヒーを提供する一方で、お酒のメニューも充実させました。たとえば新メニューの『東京アマレットコーヒー』は、ケニア産のコーヒーに1ショットのアマレット(リキュール)を加えています。『東京いちごシェイク』は、本店でも提供する、いちごシェイクにアマレットを加えたドリンクです。店の営業時間は、平日は11時から21時(日祝は20時)までなので、仕事帰りに軽く1杯を楽しんでいただくこともできます」
「人生にはコーヒーとともにお酒が必要」と考える太郎氏だが、東京駅前という場所柄もこだわった。これらの商品はテイクアウトもでき、新幹線や特急乗車時に車中で飲めるのだ。
「東京駅前」は特別な場所
前述したように、平田牧場もサザコーヒーも、いきなりKITTEに出店できたわけではない。平田牧場はKITTE開業時から入店するが、東京都内での店舗運営実績が評価されての出店オファーとなった。そこに至るまでの、両社の都心進出経緯を簡単に紹介しよう。
実は、平田牧場の最初の都内進出は、東京都調布市だった。京王線・つつじヶ丘駅近くで焼肉店を出店したのだ。世田谷区内で「牛角」のFC(フランチャイズチェーン)店を運営した時期もある。こうして飲食店ノウハウを積み上げ、自社の強みである「豚肉」に特化して都心に進出したのが、コレド日本橋店だった。
ここで「都心店の運営」「ブランド豚肉」の訴求力を磨いた後、六本木ミッドタウン店に続いて出店したのが、2013年のKITTE店だった。
一方、サザコーヒーは創業以来36年間、水戸市など茨城県内での出店だった。05年の品川店進出時は、太郎氏がコーヒーを淹れ続け、試飲してもらうため、小さな紙コップで通行人に配り続けた。当時は東京都内では、サザの知名度が低かったからだ。なお同店は昨年、駅構内の別の場所にリニューアルオープンしたが、店舗面積は以前の約2倍となった。
そんな両社でも「東京駅前は特別な場所」だと口をそろえる。東京の玄関口として「地方から来たお客にも注目されやすい」「情報発信地の役割としても大きい」からだという。