「高価格帯」の商品開発も不可欠
両社の山形県酒田市や茨城県ひたちなか市の本店は自社所有物件だが、東京都心の店はビルイン店として高い家賃を支払う。飲食店の経営では「FLR」コストという経営指標もある。
FLRコストとは、F=フードコスト(原材料費)、L=レイバーコスト(人件費)、R=レンタルコスト(家賃)を合わせた費用を、売上高で割った比率を示す。これは、70%未満が理想といえる。もし店単体では難しくても、それに近づける努力は必要だ。
そのため都心店は、店舗演出や接客とともに、高価格帯の商品開発が欠かせない。たとえば平田牧場の夜のメニューは、5500円から1万円(税別)までのコース料理を揃えている。
レストランに比べて客単価が低いサザコーヒーは、前述した「東京アマレットコーヒー」(900円)や「東京いちごシェイク」(1000円)でも訴求する。さらに東京土産の需要に応えるため、同社オリジナルのコーヒー豆を数多く販売。売れ筋は「レインボーパック」(ドリップオン9袋で1000円)だが、200グラムで3300円の自社農園「サザ農園ゲイシャ」(ゲイシャは品種名)という希少価値の高いコーヒー豆もある(いずれも税込み)。
近年、東京駅前は再開発も進む。2020年開催の「東京五輪」に向けて、さらにインバウンド(訪日外国人)も増えるだろう。KITTEのような商業施設は、一定の上質感を保ちつつ、立ち寄れる気軽さのバランスもとる。そうした諸条件を踏まえて、国内外の消費者に「もう一度行ってみたい」と思われるよう、店舗戦略を磨き続ける必要があるのだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。