「8割の女性が管理職になりたくない=成長意欲ない」は完全にピントがズレている
その2は、「個人的なことより、仕事を優先するのが当たり前」という思い込みです。男性の既婚者の場合でいえば、家族が大事と言いながらも、目の前の仕事で一大事があれば、それを優先するのが当たり前だと思っている人が大半なのではないでしょうか。この思い込みは、自分の思考や判断の“前提”になっているので、態度や言葉の端々に出てきます。なので、本人に自覚がなかったとしても、他者にはすぐわかります。
こういう“前提”を敏感に感じ取るのが、女性。管理職になったら、どういう事態が起きるか、瞬時に想像できてしまいます。例えば、子育て期の女性であれば、「管理職になったら、トラブルが起きているのに、定時退社して保育園にお迎えに行くのは無理だな」というように。
管理職候補の女性に「なりきって」、気持ちも解決策も考える
改めて、「管理職になりたい 20%」「私なんかに、管理職は務まりません。無理です」という調査結果を解釈してみましょう。
彼女らは決して仕事に対する意欲、成長への意欲がないというわけではありません。実のところ、管理職としての自分の能力に、自信が持てないというわけでもないでしょう。管理職になることによって、「すべてを仕事のために捧げる」という状況を、今は受け入れがたいということです。
マーケティングでの消費者調査の結果から、人々の潜在的な感情やニーズを読み取る。その究極の方法は、ターゲットとなる消費者に「なりきる」こと。今回のケースでいえば、「管理職候補の女性」になりきることです。
そうすれば、「女性にいかに成長意欲をもってもらうか」という課題そのものが、「男性目線」で設定されていて、ピント外れではないのか、と感じられてくるのではないでしょうか。
女性管理職を増やすための、真の課題はなんでしょうか。
それは、「仕事中心でなければ、管理職は務まらない」という状況を改善することです。その根本的な解決策は、ワーク・ライフ・バランスでいえば、「ワーク(仕事)とライフ(仕事以外の生活)を両立できるように、働く」という価値観が、広く認められることでしょう。
今の日本では、「仕事が、ライフ(生活)どころか、ライフ(命・健康)にさえ優先しているのではないか」と思えるような問題が起きるほどです。思い切って「ワークより、ライフ優先」というぐらいの意識付けが必要なのかもしれません。企業も、発想の転換が必要です。ライフを充実させることが、仕事一辺倒の場合より、知的生産性が上がり創造性も高まる、というように。