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ルネサス、巨額買収に失敗の懸念…効果が不透明、サムスンとの規模拡大競争の危うさ

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 注目を集めたのが、国内最先端の生産能力を誇った鶴岡工場がTDKに売却されたことだった。作田氏の経営判断について「ルネサスは競争力向上をあきらめたのか。もしかすると身売りがあるのではないか」と身構えた市場参加者も多かった。見方を変えれば、同氏にはルネサスがひとつの企業として収益を追求するためには、聖域に踏み込んだ改革を進め、その原資を活かして新しい取り組みを進めなければならないという危機感があったのだろう。一連のリストラによって国内の工場は22カ所から8カ所に減り(2018年6月発表時点)、従業員も5万人から2万人に削減された。

リストラの結果としてのシェア低下

 在任中、作田氏がルネサス従業員に求めたことは「粗利率(売上高に対する売上高総利益の割合)の向上」だった。具体的には、まず、人件費などの固定費を削減することが進められた。その上で、プロダクトミックスの見直しが進められ、ルネサスが得意な分野に経営資源が配分されやすくなるよう構造改革が進むはずだった。

 2015年、作田氏は道半ばでルネサスを去った。同氏は人員削減など既存事業の構造改革を進めることはできたが、新しい製品開発など成長のためのコミットメント強化に関しては十分に踏み込めなかったと考えられる。作田氏にとって、人員削減や工場売却などを進めたうえで得意分野に注力できる経営体制を実現することこそが、リストラの本質だったはずだ。

 リストラが道半ばで終わった結果、世界の半導体市場におけるルネサスの存在感は小さくなっている。特に、2017年はエポックメイキングだった。それまで世界の半導体トップの座を守ってきた米インテルに代わり、韓国サムスンがトップの座を手に入れたからだ。

 かつて世界の半導体市場で存在感を示したルネサスは、トップ10にすらランクインしていない。同社が競争力を誇ってきたのは自動車の制御に欠かせないマイコン(マイクロコンピュータ/マイクロコントローラ)分野だ。2011年3月の東日本大震災の発生後、同社の茨城県にある工場が被災し自動車向け半導体の供給が停止した。当時、ルネサスは世界のマイコン分野のトップ企業であり、同社の生産停止は世界全体の自動車生産に影響を与えた。そのマイコン分野でも同社は3位にランクを下げている。“日の丸半導体再興”の夢は遠のいているといっても過言ではないだろう。

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