ドンキは、場所を問わず所狭しと商品を大量に陳列する「圧縮陳列」が消費者に大いに受けた。圧縮陳列により熱帯雨林やジャングルのような売り場となるため、ドンキではそれを「魔境」と呼んでいるという。狭いスペースに大量陳列するため売り場の回遊性は決して高くはないが、来店客は魔境を冒険するかのようなワクワク感を味わいながら商品を選ぶことができる。これは、回遊のしづらさを補って余りあるだろう。
このようにドンキの売り場の要は“ワクワク感”となるわけだが、これはしまむらも同様であり、宝探しの要素を強めたワクワク感のある売り場にする必要があると筆者は考える。
ドンキを運営するドンキホーテホールディングスの業績は好調だ。18年8月期の連結決算は、売上高が前年比13.6%増の9415億円、営業利益は同11.7%増の515億円で、29期連続増収営業増益を達成している。既存店売上高も依然として好調で、18年8月期は4.1%増だった。ドンキの売り場の有効性は好業績というかたちで現れている。
ドンキ流の売り場づくりは、ほかの業態でも通用しているのも興味深い。ユニー・ファミリーマートホールディングスはドンキと手を組み、傘下の総合スーパー「アピタ」「ピアゴ」とコンビニエンスストア「ファミリーマート」のそれぞれ一部店舗に、圧縮陳列などドンキ流の売り場づくりの手法を取り入れたところ、売上高が大きく伸びたという。
今年2〜3月にかけてドンキの手法を取り入れたアピタとピアゴの6店舗の3〜7月の売上高は転換前と比べ1.9倍になり、6月1日にドンキ流にしたファミマ2店舗はドンキ流を始めてからの1カ月間の売上高が約1.5倍になったという。
しまむらはワクワク感のある売り場を取り戻す必要がある。さらに、かつての陳列量に戻すだけでなく、ドンキと組まないまでも、ドンキ流の売り場にするぐらいの思い切った売り場改革を実行すべきではないだろうか。
しまむらは、商品と売り場の魅力向上が待った無しの状況といえるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。