なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営
藤森氏は辞めるつもりはさらさらなかったと見られていた。その年が明けて、社長交代の発表会見に後任社長が出席しなかった(瀬戸氏はイギリスに滞在していた)という異例の事態は、直前に更迭が決まったことを物語っている。当時から取締役会議長で指名委員会委員長の潮田氏が断を下した。
上場会社でオーナー?
瀬戸氏は退任会見で淡々としていた。
「これからのLIXILをどうしていくかの方向性が違ってきた。潮田氏が違う方向を考えているのであれば、対峙するよりもそれをやってもらうことが一番だなと判断した」
瀬戸氏はまた、「ポジションを譲るのもプロ経営者」と話して、恬淡としたところを示した。3年ほど前に招聘され、今回は短期間の業績暗転で交代を要請された。そんな経緯なのに強い遺憾の念を持っていないように見えるのは、瀬戸氏にプロ経営者としての覚悟と矜持があるからだろう。
前任者だった藤森氏も日本GEの会長兼社長を経て、外部から招聘されたプロ経営者だった。そんな藤森氏でさえ実質解任されて自分にバトンが渡されたわけだ。自らの業績が上がらなければ、あるいは下がるようなことがあれば、当然自分にも同様な途が示されることは覚悟して就任したはずだ。
私はよく言うのだが、プロ経営者とプロ野球の監督は似ている。そのチームの戦績が振るわなければ、外部から新しい監督が招かれることがある。そして、多くの場合、数シーズンでまた次の監督にバトンタッチする。いってみれば、このような流動性が出てきたからこそ、プロ経営者も経営者市場に登場してくるわけだ。
さて、2人のプロ経営者の更迭を主導した潮田氏は、LIXILグループ内でどれくらいの「資本力」を擁しているのだろうか。
同氏はLIXILグループの前身であるトーヨーサッシを創業した潮田健次郎氏の長男で創業家の直系である。その持ち株数を見てみると、18年3月末現在で直接個人持ち株と、信託財産としての実質持ち株を合わせて、LIXILグループ発行済み株式の2.995%を保有している(18年3月期同社有価証券報告書より)。
上場会社における創業家持分としては、それほど大きいほうではない。例えば、出光興産が昭和シェル石油との合併を最近まで踏み切れなかったのは、創業家の出光家がほぼ3分の1を有していたからである。