生活用品を手掛けてきたアイリスオーヤマ株式会社は、これまで“安くて便利”な商品を数多く生み出してきた。ガーデニング関連用品、ペット、収納、キッチン、食品、LEDをはじめとする照明など、テクノロジーや社会の変化とともに同社の事業・プロダクトポートフォリオも変化してきた。それに伴い同社のビジネスモデルも大きく変化している。生産拠点の海外移転、家電製品の生産などはその一例だ。
従来、アイリスオーヤマは、すでにある技術などを積極的に取り込んで、その組み合わせによって新しい商品を迅速かつ積極的に開発してきた。そのなかで同社は、掃除機にモップを搭載するなど、ありそうでなかった商品を手ごろな価格で販売し、消費者の支持を獲得してきた。その発想が、同社の経営の根底にある。
足許、同社は総合家電メーカーとしての成長を目指している。従来の発想に加え、新しいテクノロジーを同社が自力で生み出すことができれば、その成長期待は一段と高まるだろう。
アイリスオーヤマのビジネスモデル
1958年にアイリスオーヤマ(当時の社名は大山ブロー工業所)は設立された。当時、同社はプラスチック関連製品の下請け加工を本業としていた。ブローとは、膨らませることによってプラスチック製品の形を整える製法のことをいう。80年代に入ると、アイリスオーヤマのビジネスモデルはひとつ目の転換期を迎えた。ガーデニング用品やペット関連事業への進出である。これは、プラスチックメーカーから生活用品メーカーへの転身といえる。
2000年代に入ると、同社は2つ目の転換期を迎えたと考えられる。生活用品メーカーとしての役割に加え、家電メーカーとしての存在感を示すようになったのである。特に、重要だったのがLED電球・照明への参入だ。LED電球の特徴は、従来の蛍光灯などよりも省電力(省エネ)、長寿命、高照度であることとされる。一方、白熱電球など従来の電球よりもLEDの値段は高かった。経済産業省の資料によると、2009年の段階でLED電球の価格は6000円を超えていた。LEDは省エネに効果的ということは徐々に認知されていたものの、あまりに高すぎた。そのなかで、アイリスオーヤマは低価格でLED電球を販売することで、急速にLED市場でのシェアを高めた。