密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?
自社が展開しているビジネスをあまねく知ってもらい、企業が成長していくためのAIDMAマーケティング施策の第一歩と第二歩がAとI、つまり見込み客や市場のAttention(注意、注目)を喚起してInterest(興味)を惹起することだ。
そのための市場へのメッセージ発信方法はいろいろある。インパクトのある方法のひとつが、自社に関する書籍を発行するという手である。ビジネスや商品そのものだけでなく、それを創業して現在刻苦精進している経営者自身のストーリーを書き込むことも、書籍としての魅力を増す。
自社、または自分に関する本を上梓することは、極めて有効なマーケティング施策であることは間違いない。単なる自費出版ではない、「ブランディング出版」とはどのような出版形態なのか。本を出す費用は約500万円だという。
商業出版で印税は10%以下
私は現在までに20冊以上の著書を上梓している。1987年に『アメリカンビジネススクール決算期』(新潮社)というMBA留学記を新潮社から出したのが最初だった。この処女出版が幸い結構なベストセラーとなり、90年代のMBA留学ブームの契機となった。
同書は、いわゆる「持ち込み原稿」だった。アポも取らず新潮社の受付を訪ね、「原稿を持ってきたので、編集の人に読んでもらいたい」と頼んだ。大手の出版社ではこのような飛び込み訪問は珍しいことではないらしく、門前払いをされることもなく出版部の副編集長という女性が出てきてくれた。もちろん私は知らなかったのだが、Y氏は新潮社の名物編集者で、なんとあの松本清張の担当編集者だった。のちに親しくなって伺ったのだが、「先生方の文章を私が仕上げているのよ」と、つまり添削していると豪語していた。
処女作が新潮社という名門出版社から出たこともあり、それから30年にわたり、いくつもの出版社にお世話になってきた。出版社からテーマを与えられて執筆する場合と、私のほうで出したい内容があって、それを相談したり、場合によっては出版企画書を用意していくつか出版社をまわったこともある。
私が本を出させてもらったところは、講談社、プレジデント社、東洋経済新報社、ダイヤモンド社、日本実業出版社など大手から中堅どころまでさまざまだ。
これらの出版社から本を上梓する場合は、もちろん印税が支払われる。会社の規模などによるが、私の場合、本の定価の8%から10%が多かった。業界的には10%が上限で、それは大手出版社だった。印税が支払われるのは、まず初版の印刷部数に対してであり、定価1500円の本を5000部出せば、初版印税が75万円となる。