密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?
この金額からわかるように、「著書による優雅な印税生活」などは通常ありえないことだ。ごくごく一部の売れっ子商業作家くらいだろう。人気作家の林真理子でさえ、アマゾンの中古本販売やブックオフの存在についてしばしばエッセイのなかで愚痴っているほどだ。
出版社によっては、初版発行後3カ月後の支払いとか、初版発行時と数カ月後に半金ずつなど、バリエーションがある。初版の印税が6%で二刷から10%などという段階的な設定も珍しくない。初刷の部数は、近年どんどん少なくなっている。初版1万部などということは、ほとんどない。3000部あるいは1500部くらいが通常となってきている。
このように、出版に際して著者が印税をもらえる通常の出版形態を「商業出版」という。
自費出版とは自腹で本を出すこと
著書を出版するのは、ビジネス的に大きな好影響がある。自社の商品やビジネスについて知ってもらう、また、それを創業したり責任者として展開している経営者自身を知ってもらい、親身な感覚が読者に醸成される。特にコンサルタントや士業(税理士、会計士、弁理士など)の専門家にとっては、著書があるのとないのとでは、その権威付けに大きな違いが出る。
また、私が指導してきた経営者のなかには、いくつかの会社を任されてきたプロ経営者が何人かいたが、その人たちには必ず自著を出すことを勧めてきた。私自身が経営者としてのキャリアをたどってきた過程で、自著があったおかげで次の挑戦機会を与えてもらったという実感があったからだ。自著を刊行することによる効能について感度がよい経営者は、実は多くない。筆の立つ社長さんというのはさらに少ない。
また、商業出版の場合はISBNコード(日本図書コード)という13桁の番号が付けられ、1冊は国立国会図書館に納本することが国立国会図書館法で定められている。「自分の本が国会図書館に納められている」ということが、個人著者の大きな誇り、励みになっているところもある。
しかし、出版社側としては部数が読めない、知名度の低い会社や経営者の本を早々に刊行してくれるわけではない。そこで次善策として知られてきたのが「自費出版」だ。書籍の体裁の本を印刷してもらい、印刷してもらった分は自分が引き取る。それを知り合いや友人、お世話になった人や組織に進呈して読んでもらう。引退してから人生を振り返る「自分史」が典型だ。