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調査担当者とAさんの主張は真っ向から食い違っています。公開されていないようなので、事実はわかりません。ただ、家族がAさんや自分たちが不利になるような主張をするでしょうか。「口止めされていた」などと言うとは到底思えません。
消えた金の取り扱い
調査担当者も、根拠が無いのに納税者の行動を否認することはありません。手に入れた事実を基に精一杯、職務をまっとうします。今回の調査では、Aさんの親が生前購入した金の行方がわからず、Aさんや家族が隠しているはずだと考えたのでしょう。実際に隠している可能性もありますし、そうでない可能性もあります。Aさんの親が、誰かにあげたとか紛失したといった想像をすることは容易です。
調査担当者は、1億円の金の購入があり、それが取扱業者に対する売却の事実がないことと、贈与の事実がないことから、売却および贈与の事実はないと推認し、金がまだ存在すると判断しました。
しかし、Aさんの主張が事実なら、家にもないし存在も知らなかった金を相続財産に含めろと言われ、調査担当者がいくら探しても見つけられないにもかかわらず、もらっていない金の分の相続税を納めろと命じられたことになります。
それはあまりにも酷です。もちろん、公開されていない細かい事実があるのかもしれません。たとえば、Aさんや家族が何かを隠している雰囲気だったとか、押し入れから金塊がちらっと見えていたとか、急に家族全員が金歯に変えたなどを、調査担当者が見たり感じ取ったという可能性です。
しかし、証拠がない以上、否認することは困難です。結局、総合的に勘案して、金が存在したと認めるには十分といえず、相続財産には含めないという、Aさんに有利な判断が下されました。
推認で否認されそうになっても、論拠をもって対抗すれば、第三者の正しい判断を得られたという事案でした。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)
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