JDIは筆頭株主のINCJから「3月末までに外部資本の注入で合意しなければ、支援を継続するのは難しい」と迫られていた。そのため、台中連合は“時の氏神”となった。
台中連合の3社は4月下旬から6月にかけて順次、JDIの支援を機関決定する予定だったが台湾の2社が機関決定の延期を4月26日に発表。5月13日、台中3社が機関決定を再延期した。
JDIは6月18日の定時株主総会で台中3社の会社支援を承認する段取りだったが間に合わず、改めて臨時株主総会を開く見通しだ。金融支援合意後、JDIの業績悪化が判明し、3社とも投資に慎重になっている。機関決定できるかどうか流動的だ。台中連合の支援が崩れる可能性について月崎社長は「代替プランがある」としたが、先行き予断を許さない。
台中連合の資金が入るとしても、それまでには時間がかかるため、INCJはJDI向け債権のうち750億円を、議決権のない優先株に振り替える。残りの770億円は長期格付け(シニアローン)に切り替える。これとは別に4月19日付で200億円のツナギ融資を取り付けた。JDIは「さらに400億円のツナギ融資を見込める」と説明しているが、台中連合の支援が白紙に戻れば「6月にも危機がやってくる」(関係者)。
JDIの資本増強は台中連合の420億円の普通株の買い取りとINCJの優先株分の750億円の合計1170億円となる。台中支援が決まっても難関が待ち構えているのだ。
それは米国の対米外国投資委員会(CFIUS)による審査だ。CFIUSは外国企業による米企業の買収について、安全保障上の問題がないかどうかを審査する機関だ。液晶は半導体など27分野の「重要技術」に準ずる扱いとされ、CFIUSは買収審査を厳しくしている。
昨秋、LIXILグループはイタリア子会社のペルマスティリーザを中国企業に売却する案件が断念に追い込まれた。ペルマスティリーザはビルの外壁を手掛けるメーカーで、安全保障に抵触しないが、米国での売り上げが4割を占めるため、中国企業への売却を承認しなかった。
JDIの主力製品である液晶ディスプレーの最大顧客は米アップル。米国企業に密接に関連するビジネスと判断されれば、中国企業の出資に待ったがかかる可能性が高い。米トランプ政権は、中国企業が先端技術の分野でM&A(合併・買収)することを警戒しており、“米中貿易戦争”がJDIの資本増強策に影を落としている。資本増強がすんなり進むかどうかは見通せない。