働き方改革で若手社員の会社への「貢献意欲」が減退?組織が成り立つ要件とは
果たして本当に“働き方”が改革されているのか
「組織で働く以上は、程度問題ではありますが、必ずなにがしかの妥協をしなくてはなりません。自己犠牲的な面が一部の人々に集中してしまうブラック企業的体質は問題ですが、働く側全員が自分のやりたいようにやっていたら組織としては成り立たなくなってしまいます。つまり、組織において『貢献意欲』を持たずに自己主張だけが強い人間は、その組織で働くこと自体が適していないと組織側から判断されてしまう可能性があるのです」(同)
会社への「貢献意欲」と書くと少し気後れを感じるかもしれないが、大学のサークルでも部活でも、いってしまえば家族でさえも組織である。そこでは多くの人が無意識的に「貢献意欲」を少なからず抱いて過ごしていたはずだ。しかし、会社となるとそれができなくなる若者が増加していると有馬氏。
「さまざまな社会問題があり、管理者側の“働かせ方改革”は進んでいますが、果たして働く人々の意識の面での“働き方”は改革されているのか、という素朴な疑問を私は持っています。近年、会社の拘束時間は減少し、個人の自由裁量時間が増加する傾向となっていることもあり『とにかくお金さえもらえれば、会社がどうなろうと知ったことではない』という意識が無自覚であっても若者を中心に蔓延しているように感じます」(同)
自由裁量時間はすべてが自分のための時間なのか
社会の歯車になりたくない、自由に自分らしく生きたいという姿勢を持つことも大事だが、社会を回すには最低限の『貢献意欲』と自己犠牲もまた必須の観念。
「働く時間は減っているのですから、今まで通りだらだらと拘束時間を過ごしたのでは、ただ効率を下げただけになってしまいます。それでは会社のためには全くなりません。だとすれば、自由裁量時間のすべてをプライベートに注ぐのではなく、この時間の中で『効率よく仕事をするための知恵』や『新たな企画』を練るといった意識を多少なりでも抱くことは、ときには必要だと思います。少なくともそういった意識を持っている人材が組織からは重宝されることを、これから就職や転職活動をする人は覚えておくべきでしょう」(同)
自分のために組織があるのではない。社会もまたしかり。よく叫ばれる「個性重視」という言葉であるが、会社への『貢献意欲』も相応に考えたうえでワーク・ライフ・バランスを考えなくてはいけないということなのだろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)