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コメダ珈琲の新業態は“意識高い系コメダ”?銀座の店舗でハードな体験、強気の価格

文=谷口京子
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「KOMEDA is □」公式HP。店名はフードメニューに多く使用されている「米」と「大豆」に由来するダジャレ的な意味と、「□」はあえて空欄にしておき、新しい魅力をこれからも□に入れていきたい、という想いが込められているとか
「KOMEDA is □」公式HP。店名はフードメニューに多く使用されている「米」と「大豆」に由来するダジャレ的な意味と、「□」はあえて空欄にしておき、新しい魅力をこれからも□に入れていきたい、という想いが込められているとか

 1968年、名古屋に1号店をオープンしたコメダ珈琲店(以下、コメダ)。開業から54年が経った現在は、グループ店を含めた965店舗(2022年8月末時点)を全国に展開している。

 そんな同社が2020年7月にオープンしたのが、新業態の「KOMEDA is □(以下、コメダイズ)」だ。コメダイズでは、米や大豆など植物由来の食材を指すプラントベースフードのメニューを提供しているという。

 プラントベースフードは生産時の環境負荷が低く、CO2排出量の削減につながるとされ、近年注目を集めている食材。運営元のコメダは2018年から“心にもっとくつろぎを”プロジェクトと題し、店舗にソーラーパネルを設置してCO2を削減したり森林保全活動をしたりと、サスティナブルな取り組みを行っており、このコメダイズも同プロジェクトの一環としてオープンしたという。

 情報だけを見ると“意識高い系コメダ”という印象だが、いったいどんな喫茶店なのだろうか。現時点で唯一の店舗である東銀座店に行ってみた。

都内の穴場コメダ?待ち時間なしで入店

 地下鉄の東銀座駅から歩くこと2分。コメダイズ東銀座店は、銀座松竹スクエアというビルの1階にある。オフィス街なので平日はビジネスパーソンが多そうだが、筆者が来店したのは日曜の夕方だったからか、通行人はまばらだった。

 コメダイズも混雑しておらず、スムーズに一人用のカウンター席に着席。タイミングによって状況は変わるが、都内のコメダはいつ何どきも“待ち”が出る印象があったので、空いているのが意外だった。

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コメダイズ外観。「KOMEDA is □」のネオンが往来に向けて光っているが、入り口はビル内にある

 緑を基調にしたコメダイズの店内には「再生の木」と名付けられた柱が象徴的に置かれている。公式情報によると、この木は「物流で荷物を載せる荷役台として使われた古材」から作られているとか。その他にも、他店舗で出た“コーヒーかす”と砂利を混ぜた塗り壁など、至るところにリユース・リサイクル素材が使用されている。

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コメダイズ店内。青色の照明は廃ガラスを再利用したペンダントライト
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窓際のカウンター席は目線の高さに目隠しがあり、店外の視線が気にならない仕様になっている

 店内には30代以上の客が多く、落ち着いた雰囲気だった。全席に設置された電源コンセントは客も使用できるので、PC作業をする人の姿もちらほら。平日はリモートワークをする客も多そうだ。

コメダイズのバーガーもやっぱり巨大?

 コメダイズで食べられるのは、プラントベースフードに造詣が深いべっぴんプラス株式会社と共同開発した特別メニュー。通常のコメダとの明らかな違いは、強気の値段設定にある。

 おつまみ類は1000円以下だが、コメダイズのバーガー類はすべて1280円。通常のコメダのハンバーガー類は700円前後なので、割高な印象だ。コメダ名物の「カツパン」は900~1000円が相場なので価格帯は近いものの、かなりのボリュームがあり、実質2人分なのでお得感があると人気を博している。コメダイズの価格帯でもカツパンのようなボリュームがあれば納得できるのだが、どうだろうか。

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注文はタブレットで行う。「フード一覧」から選択する他に「べっぴんバーガー」「小粋なサンド」「わびさびトースト」など、カテゴリーごとにメニューの確認ができる。ネーミングセンスが独特
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コメダにはないアルコール類が飲めるのもコメダイズの特徴だ。「香るエールビール」(690円)をはじめ、6000円近くするボトルワインもラインナップに入っている

 30種類以上あるフードの中でも、オープン当初から一押しされているのが「べっぴんバーガー“アボ照り”」(1280円)だ。

 パテには代替肉の大豆ミートを使用し、バンズは米粉入り……と、まさに植物由来にこだわった一品ということで、まずはこのアボ照りを注文。タブレットを操作すると、カット方法について「変更なし」or「2つ切り」という2択を迫られ、続いて「辛しマヨネーズは?」という質問をされて、5つの選択肢を提示された。質問の多い喫茶店である。

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通常のマヨネーズも選択可能。ここではスタンダードらしき「辛しマヨネーズ」を選ぶ
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イチオシの「べっぴんバーガー“アボ照り”」(1280円)。べっぴんバーガーは、特別なものなどを指す「別品」が名前の由来になっているという

 オーダーから10分ほどでアボ照りが到着した。大きさを測ると直径は約10cm。コメダの「カツパン」は筆者の手のひらよりも大きいので、べっぴんバーガーは少し小さいかもしれない。……そう思ったのもつかの間。

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ナイフとフォークも提供してもらえるので、自分でカットできる

 バーガーを持ち上げるとご覧の通り、7cm前後の厚みがあり、パテは1cm以上。さらに、辛しマヨネーズと2枚のスライストマト、アボカドもたっぷりはさまっている。コメダのカツパンには劣るが、数人でシェアしても問題ない量だ。ひとりでも「2つ切り」を選択すべきだったと後悔した。

 可能な限り大きく口を開けてハンバーガーをほおばると、濃いめのソースと辛しマヨネーズがほどよく口の中で混ざり合い、味がまろやかに。大豆ミートの食感は肉に近く、食べごたえがあるが、肉特有の臭みはない。ソースはジャンクな味付けだが、パテの味がさっぱりしているのでこってり感は薄め。全体的にあっさりしているので、ファストフードのジャンク感が好きな人には物足りなく感じるかもしれない。

定番のシロノワールは何が違う?

 最初の3口はおいしくいただいたが、その後は量との勝負。完食できるか不安になったところで、添えてあるポテトフライを食べる。ポテトフライは塩で味付けされた素朴な味わいで食べやすいが、途中からそのシンプルな味に飽きてくる。

「味変したい」と思った瞬間、注文時に尋ねられた「辛しマヨネーズは?」という質問の真意に気付く。あれは、辛しマヨネーズを別添えにして、ポテトにつけながら食べた方がおいしい、という店からのメッセージだったのかもしれない。バーガーを食べ終えた後にポテトだけを単体で食べ続けるのは、なかなかハードだった。

 値段はちょっと強気だが、ボリュームはポテトを含めて申し分ない。コメダイズでも、通常のコメダでカツパンを頼むときと同じ心構えでオーダーした方がよさそうだ。

 メインを食べた後は、通常のコメダにもあるメニューの味も確かめたいところ。追加で定番デザートの「シロノワール」と「コメダブレンド」をオーダーした。

 コメダイズの「プラントベースシロノワール」は、オープン1周年を記念して採用されたデザート。コメダファンの熱い要望に応えて、2021年から新メニューに加わったという。製造工程は通常のシロノワールと同じだが、材料はすべて植物由来。ソフトクリームはアーモンドミルクで作られているという。

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「プラントベースシロノワール」(880円)と「コメダブレンド」(650円)。コメダイズではコメダの“ミニサイズ”に相当する大きさのシロノワールのみの提供

 アーモンドミルク由来のソフトクリームはコクがあるが、さっぱりした味わい。満腹でも食べられるサイズ感も◎。ぜひ、通常のコメダでも提供してほしい。コーヒーはいたって普通の味だったが、別添えのミルクは“豆乳”を使用している。徹底してプラントベースを貫いているようだ。

 ちなみに、コメダでドリンクを注文するともらえる“豆菓子”のサービスは、コメダイズでは行われていないようだ。HPにも豆菓子に関する記載はない。豆菓子はプラントベースフードではないのか、もしくは食品ロスの観点で割愛されたのか、真相はわからない。

 2022年9月現在、コメダイズは東銀座の1店舗のみだが、コンセプトの作り込み具合から考えると、1店舗で終わらせるとは考えにくい。ただし、ビジネスモデルとして、環境意識が高く、客単価も良い街でなければ成立しなさそうではある。また、全国展開するにはプラントベースフードの生産体制の整備などの課題もあるだろう。コメダイズがこれらの課題をクリアしてどう広がっていくのか、注目したい。

清談社

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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