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『ルールを変える思考法』著者・川上量生氏インタビュー

ドワンゴ川上会長に聞く、ニコ動成功の理由と、社会を不幸にするネット世論のおかしな構造

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ドワンゴ川上会長に聞く、ニコ動成功の理由と、社会を不幸にするネット世論のおかしな構造の画像1ドワンゴ会長の川上量生氏(撮影=西村康/SOLTEC)

 動画共有サイト「ニコニコ動画」をはじめ、ブログとメルマガを融合させた「ブロマガ」、音楽配信サービス「dwango.jp」などインターネット上で多彩なエンタテインメントサービスを提供するほか、今年4月開催時には2日間で10万人以上の来場者を動員し話題を呼んだ「ニコニコ超会議」などのリアルな領域でもビジネスを展開するドワンゴ

 そのドワンゴ創業者で現在会長を務める川上量生氏が、対談本以外では自身初となる書籍『ルールを変える思考法』(角川EPUB選書)を10月に上梓し、早くも話題を呼んでいる。

 今回は川上氏に、

「ソーシャルメディアへの誤解」
「ニコニコ動画成功の要因とは?」
「おかしな方向に向かうネット世論は、人々を不幸にする」
「ネット炎上のメカニズム」
「ドワンゴの今後の新たな展開について」

などについて聞いた。

『ルールを変える思考法』の無料の電子限定版に掲載されている、株式会社麻生の社長でドワンゴ社外取締役の麻生巌氏と川上さんの対談は、もともとゲーム情報サイト・4Gamer.netに掲載の予定でしたが、同サイトには載せられなかったと聞きました。なぜ掲載できなかったのですか?

川上量生氏(以下、川上) 「政治的なことは扱わない」というのが理由だったんですね。「中国が将来的に沖縄を狙ってくる」というようなニュアンスのことを麻生さんが言われて、そういう内容は掲載できないということですが、僕は問題ないかなと思っています。「政治的なこと」というのであれば、第三次世界大戦をテーマにしたゲームなどたくさんありますし、それらは全部ダメになりますね。対談当時(2012年12月)は確かに沖縄について中国が何か言ってくるというような話はなかったのですので、刺激的だったのかもしれませんが、その後の展開【編註:今年5月、中国共産党の機関誌・人民日報に「沖縄の領土帰属問題は未解決である」という論文が掲載され、日中間で問題となった】を考えると、出しておけばよかったと思います。

–問題視された箇所だけを削って掲載するという選択肢は、なかったのですか?

川上 麻生さんの発言は、政治的な意図のないもので、「沖縄が地政学的にそういう場所にあるから、沖縄の不動産を買うというのはビジネス的に成立するのではないか」という内容です。対談のテーマとして「中国が沖縄を狙っている」ということを言いたいものではないので、政治的な発言として問題視された部分は、対談の本筋でもないわけです。また、対談の一つのテーマである「長期的な視野で戦略を立てる」という内容の事例が、問題視された箇所しかなかったので、「そこが消えるともったいなさすぎるだろう」ということで、掲載は見送らざるを得ませんでした。

●ソーシャルメディアへの誤解

–『ルールを変える思考法』は、その4Gamer.netで掲載されていた川上さんの連載記事が骨格となっていますが、ドワンゴが手掛けられているインターネット・サービスにおけるルールを考える上で、まずお聞きしたいのですが、川上さんはソーシャルメディアについて「進化した口コミ」と定義されていますが、どういう意味でしょうか?

川上 従来、口コミというのは、発言した人の声が聞こえる範囲に存在する特定の人にしか届きませんでした。ところが、ITの進化によって、電子メール、LINE、もしくはFacebookのような、いわゆるソーシャルメディアを介して、声が聞こえる範囲に存在しない人にも、口コミが伝搬するようになりました。一方で、マスメディアというのは1対N、つまり発言者の声を不特定多数の人に届けるものです。ソーシャルメディアは声の大きな口コミですが、マスメディアとは本質的に違うものです。

 しかし、ソーシャルメディアについて語る時に、「これからはソーシャルメディアの時代だ」というように、「ソーシャルメディアが従来のマスメディアを代替するもの」という文脈で話をする人が多いのですが、それは間違いだと思います。

–「ネット上の口コミは、マスメディアとは違い、人々が伝えたいから伝わるのでウソがない」という考え方には危険があるともおっしゃっていますね。

川上 まず、口コミのほうがウソは確実に多いと思いますが、それはおいといて、僕が言っているのはプロモーションの手段として口コミを利用することは、そんなに簡単じゃないということです。今のネット上の口コミは、「口コミをしてくれたらお金を払います」というかたちで行われているケースもあり、それはステマ(ステルスマーケティング)として批判されているやり方ですよね。つまり、お金を払って情報を伝搬させるというやり方です。

 そうした口コミで広がるものは、美容品や健康器具のように単価が高くて利幅の大きいものです。その利幅を流通する人に分配することで売る、というのがネットワークビジネスで、普通の商品はそういうことをやりません。例えば、任天堂の商品をネットワークビジネスで売りますか? という話ですよ。つまり、ネットを介して口コミを行うようになったからといって、ソーシャルメディアにそういう売り方が成立することはないと思います。少なくとも、プロモーションの方法として、マスメディアがソーシャルメディアに取って代わられるという考え方には誤解があると思っています。

BusinessJournal編集部

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