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中国人が上司になった→ストレートな意思疎通で仕事ラクに…絶対NGな行為も

文=清談社、協力=千葉祐大/キャリアマネジメント研究所代表理事
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「gettyimages」より

 グローバル化が進み、日本企業に外国人の社員が在籍して、同じチームで仕事をすることは珍しくなくなった。特にGDP世界2位の大国であり、超巨大市場を抱えている中国とのビジネスはより密接になっている。その影響で日本で働く中国人も増えており、企業によっては「上司が中国人」というケースも多くみられるようになってきた。たとえば少し前には、上司が中国人になった人の体験談がインターネット上に投稿され話題となったことも。この投稿者によれば、それまで課長が日本人だったときには、その課長が上に良い顔するためにいろいろと『無茶振り』をしてきたが、新しく課長になった中国人は『できないものはできない』と上に言ってくれるので仕事が大変ラクになったという。この投稿をめぐりネット上では

<ハッキリ言う日本人は出世しづらいが 中国人はハッキリ言っても出世する>

<中国人って良くも悪くもズバズバ物言う>

<世の中何がよく働くかわからない>

など、さまざまなコメントが寄せられていた。

 日本と中国は歴史的に関係が深いが、中国は社会主義国ということもあり、「近くて遠い国」ともいわれる。そんな中国人が会社で上司となった場合は、どのような点に気をつければいいのか。一般社団法人キャリアマネジメント研究所・代表理事の千葉祐大氏に聞いた。

「日本で働いていて中国人が上司となる場合、大きく2つのパターンがあると思います。ひとつは、日本企業が中国進出をしていたり、協業するといった目的で、中国籍の人材を入社させて、それが自分の上司となるケース。もうひとつは、中国企業が日本の会社を買収したり、日本に支社などを置いていて、そこで雇用されたことで上司が中国人となるケースです」(千葉氏)

 日本企業と中国企業の違いとは何か。

「中国という国は広くて、地域によって多様性があり、出身によって特性も違う。中国の北部と南部の人のDNAは、日本人と韓国人以上に離れているといわれています。さらに、中国は変化のスピードが速いので、世代によっても考え方や競争意識に大きな差がある。一口に中国人といってもさまざまですので、最大公約数的な話になるというのが大前提ですが、まず仕事においてもスピード重視ということはいえると思います。日本企業だと、100%完璧な製品ができてから初めて市場に出すというのが当たり前ですが、中国企業は完成度を高める前にリリースしてしまう。クオリティとスピード、どちらを重視するかといったらスピードを取る。ライバルに出し抜かれるぐらいだったら、まず出してしまって、それから問題点を潰していこうというスタイルです」(同)

スピードを重視、すぐに方針変更も

 中国人の上司を持った日本人が戸惑うのは、まずこのスピード感に基づいたビジネスの進行だという。

「スピードを重視してすぐに方針を変えてしまうので、昨日言っていたことが今日は違うということがよく起きます。また、日本企業では報告、連絡、相談、いわゆる『ほうれんそう』が重視されますが、中国人は『細かいことは報告しなくてもいいので進めてくれればいい』というタイプが多い印象です。なので、上司のお墨付きをもらいながら仕事を進める人よりも、自分の裁量でどんどん仕事を進められる人のほうが向いているかもしれません」(同)

 中国人はシンプルでストレートな伝え方をするので、部下にとっては余計な仕事や無駄な仕事が生じず、かえってメリットが大きいとの声もあるようだ。

「中国では、自分のやりたいことや考えていることをはっきり伝える人が評価されます。日本人的な本音と建前の使い分けというのは美徳かもしれないですが、ビジネスの世界では非効率。改めて確認が必要だったり、行き違いが起きて二度手間になることは、スピードが阻害されるという理由で嫌悪されます。逆にいえば、率直な意見を交わせるという環境は、無駄なストレスを溜め込まないで済むとも考えられますね」(同)

メンツを潰されることを最も嫌う

 ただし、ストレートな意見をぶつけるときに気をつけなくてはいけないのは、その時の状況だという。

「衆目のある状況で上司に対して意見するというのはタブーです。どんなに内容が正しくても、第三者が見ているなかで目下の者が目上の者を責めると相手のメンツが完全に潰れてしまうからです。中国人は、このメンツを潰されることを最も嫌います。メンツは中国人のアイデンティティの根幹をなしているからです」(同)

 中国人にとって、メンツは「名誉」や「世間体」だけでなく、自分が他人よりも優れているということを証明するために譲れないものという意識がある。『中国人は謝らない』といわれることがあるが、それもこのメンツを重視しているためだ。

「彼らが最もメンツを潰されたと感じるのは『人前で恥をかかされた時』だそうです。この意識は世代を超えていて、中国人の若者に聞いても同じことを言います。メンツを傷つけず、自尊心を満たすということは、中国人とコミュニケーションを取る上ですごく重要です」(同)

 ここでいう「人前で恥をかかされた」という状況は、その本人がいなくても起こりうる。

「例えば、飲み会などの本人がいないところで陰口を言うのもNGです。日本人でも、その場にいない人の悪口はあまり言わないほうがいいと思う方は多いですが、中国人はもっと敏感で、陰口が漏れ伝わって本人の耳に入った場合、メンツを潰されたということで、深刻なトラブルになる可能性があります」(同)

 中国人がメンツを重要視するということは、逆にメンツを立てるように振る舞えば、より友好的な関係になれるということでもある。

「中国人は気を遣うより、気を遣われるほうが上という意識を持った人が多いです。なので、気を使って特別扱いをしてあげれば、相手のメンツも立つし、自尊心も満たされる。わかりやすいのは『お土産』ですね。みんなで取りわけられるようなものではなく、その人にだけ特別に渡すようなお土産を贈ると自尊心が満たされ、とても喜んでくれます。モノを贈ることに抵抗があるなら、情報でもいい。『これは誰にも言ってないことだけど、あなただけに教えます』など、重要な情報をいちばん最初に伝えることも『特別扱い』になると思います」(同)

 上司のメンツを立てようとするあまり、部下はイエスマンとなってしまいがちだが、そこでしっかり意見を言い、目標に向かって仕事を進めるというのが理想的だ。ただし、そこで気をつけるべき点がある。

「中国人はスピード感を重視すると言いましたが、その一方でコンプライアンスが置き去りにされがちなところがあります。法を破るような犯罪まではやらないが、グレーゾーンを攻めるようなことは当たり前にやる。激しい競争社会で揉まれているので、綺麗事を言わず、少しでも出し抜いたほうが勝つというマインドなんです」(同)

 中国企業や上司の下で仕事をする場合、自分の倫理観が試されるような場面もあるかもしれない。

「中国には『上に政策あれば、下に対策あり』という格言があります。中国は社会主義国なので、国が一方的にさまざまな規制を強いてくる。それを庶民はただ従うのではなく、どこに抜け道がないかとまず考えるんです。この感覚を日本人が共有するのは難しいかもしれません」(同)

 とはいえ、そのスピード感や、ギリギリを攻めて勝ち取っていくことに仕事としてのダイナミズムを感じるかもしれない。中国人の気質を理解しつつ、あまり小さな事にはこだわらない器量を持って付き合っていくというのが心得といえそうだ。

(文=清談社、協力=千葉祐大/キャリアマネジメント研究所代表理事)

千葉祐大/一般社団法人 キャリアマネジメント研究所 代表理事

千葉祐大/一般社団法人 キャリアマネジメント研究所 代表理事

1970年生まれ。花王株式会社を経て、2012年より現業。異文化対応に悩むビジネスパーソンに対し、価値観の違う相手とのコミュニケーション法を指導するコンサルティング業務を行う。研修、セミナー講師としても全国の企業、自治体、教育機関等で年間80回以上登壇している。
〈おもな著書〉
『小さな会社の外国人活用の教科書』(ぱる出版) 『異文化理解の問題地図』(技術評論社)
『なぜ銀座のデパートはアジア系スタッフだけで最高のおもてなしを実現できるのか』(IBCパブリッシング社)など。
一般社団法人 キャリアマネジメント研究所

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