セブン-イレブンが「おにぎり」の一部商品を実質約3割値下げし、300円台の弁当類を発売するなどして低価格路線に踏み切ったのではないかと注目されている。背景には何があるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
全国に2万1592店(7月末現在)を展開し、国内コンビニチェーン1位のセブン。プライベートブランド(PB)の総菜類はクオリティが高いと定評がある一方、他チェーンに比べて価格がやや割高で量が少ないというイメージも強い。他チェーンに追随するかたちで5月には価格据え置きの増量キャンペーンを実施したが、直近の2024年3~5月期決算では国内コンビニ事業の営業利益が前年同期比4%減となるなど苦戦している。
セブンの主力商品である「おにぎり」。オーソドックスな具材で購入層も広い「紅しゃけ」は税抜き価格で110~120円台ほどだった時代の印象のままの人も少なくないが、現在では175円、税込みだと189円にまで値上がりしている。「紅しゃけ」に限らず他の「おにぎり」も高価格なものが目立つ。「大きなおむすび厚切り豚ロースの生姜焼きマヨ」は270円(税込)、「大きなおむすび 鳥めし」は264.60円、「丸ごと半熟煮玉子おむすび」は280.80円、「大きなおむすび すじこ醤油漬け(鮭まぶし飯)」は356.40円、「山賊むすび」は340.20円となっている。
そんなセブンの「おにぎり」にまつわる変化が注目されたのが先月7月。従来からある「味付海苔 炭火焼熟成紅しゃけ」(税込189円)の販売を継続する一方、「手巻おにぎり しゃけ」(138.24円)を発売。税抜価格は128円で120円台に抑えた。このほか、「手巻おにぎり ツナマヨネーズ」を138.24円で発売したが、従来151.20円で販売していた同名商品からの切り替えとなるため、事実上の値下げとなる。
ちなみに「紅しゃけ」と「しゃけ」は何が違うのか。ともに京都八代目儀兵衛の監修(ご飯監修)だが、原材料名をみると、両方ともに
・塩飯(国産米使用)、鮭フレーク、海苔(国産)、pH調整剤
と同じで変わりはない。実際に食べたコンビニチェーン関係者は「味の仕上がりに大きな違いは感じられない」という。
セブンの強い危機感
セブンは「おにぎり」以外でもお手頃価格の惣菜類を投入。7月には税抜き398円の幕の内弁当「幕の内398」(税込429.84円)を発売した。
「『しゃけ系おにぎり』は180円台と130円台の商品を併売するかたちをとってはいるが、後者のほうが著しく販売個数が多ければ前者は終売となる可能性も高く、また130円の商品のほうが客からは支持されるだろうから、事実上の3割値下げといっていい。『しゃけ』とツナマヨという2大定番おにぎりを税抜120円台で発売してきたところに、セブンの強い危機感を感じる。
これまでセブンは高クオリティ路線を貫き、それでも業績は好調だったが、最近では売上に減速が見え始め、ついに6月の売上・客数・客単価がそろって前年同月比マイナスに陥った。一方で競合するファミリーマートとローソンの既存店売上は好調であり、セブンとしては戦略を大きく見直し、割高かつ高クオリティの商品を残しつつ、庶民に届く商品も揃える必要があると判断したのだろう。
たとえば『しゃけ』の『おにぎり』目的で来店した客が『デザートはちょっと割高でも贅沢なものを買おう』となるなど“ついで買い”を期待できるので、このようにオーソドックスな定番商品で割安なものを揃えておくというのは小売店にとってはプラスの効果が小さくない」(コンビニチェーン関係者)
各チェーンによって戦略に特徴
競合他社も割安感・お手頃感のある商品を投入している。ファミリーマートは7月末から8月にかけ、「野沢菜めかぶおむすび」(税込135円)、同チェーンで人気の「たぶん40%増量作戦」キャンペーンとして「増量明太海苔弁当」(460円)を発売。ローソンは以前から「おにぎり」で税込140円以下に抑えた商品を複数揃えている。
「ファミリーマートの総菜類やPB(プライベートブランド)のスイーツは“量の多さ”に定評があり、庶民向けという点ではコンビニチェーンのなかでは一歩リードしている印象。ローソンは特にPBのスイーツ類で常に人気店とのコラボ商品を揃えたりとスイーツに力を入れるなど、各チェーンによって戦略に特徴がある」(コンビニチェーン関係者)
(文=Business Journal編集部)