ホロライブ運営会社、下請法違反がエグい…無償で修正243回、支払いが1年後

公正取引委員会の公式Xアカウントより

 バーチャルYouTuber(VTuber)「ホロライブ」などを運営するカバー株式会社に対し公正取引委員会は、下請法違反があったとして25日、勧告・指導を行った。カバーは動画用のイラストやモデルの作成の発注先事業者に対し、契約上は必要とは分からない修正を無償で7回もやらせたり、「制作完了」との連絡後も「やり直し」をさせたり、支払期日を守らずに支払いが成果物の受領日の619日、約1年7カ月後になるケースがあった。無償で修正させていた事案は計243回(下請け事業者は23名)、支払遅延による遅延利息の金額は総額115万2642円に上り、SNS上では「エグいことしてるな」「VTuberだってクリエイター側なのにクリエイターへの搾取って」といった声があがっている。公取委から勧告を受ける一方、同社が現在、求人サイト上で法務部長を募集していることも話題となっているが、背景には何があるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 2016年創業のカバーは、主にVTuberプロダクション「ホロライブプロダクション」運営で急成長を続ける2次元コンテンツ企業。所属するVTuberのライブ配信、動画・アニメ出演、楽曲リリースなどを展開。たとえばグループ「ホロライブ」には約311万人のチャンネル登録者数を有する「宝鐘マリン」をはじめ30名以上が所属し、YouTubeの総チャンネル登録数は8841万(24年3月時点)、関連動画の年間再生回数は41億回に上る。ホロライブは海外にもファンが多いことも特徴で、地域別タレントチャンネル登録者数は約3割を海外が占める。

 ネット上での展開やVTuberをARで写真・動画を撮影できるスマートフォン向けアプリ「hololy」などに加え、リアルでの音楽ライブやイベントなども幅広く展開している。売上構成比としてはフィジカル/デジタルのVTuberグッズ販売である「マーチャンダイジング」が全体の41.4%を占め、24年3月期の累積グッズ出荷数は240万個。

 業績は好調だ。24年3月期の売上高は前年比47.5%増の約302億円、営業利益は同62%増の55億円、純利益は同65%増の41億円。25年3月期も2ケタの増収増益を見込む。

「注目すべきは粗利率が約5割、営業利益率が約2割と高収益体質である点です。在籍VTuber1人あたりの年間売上高が3億円を超えており、効率良く稼げるモデルを構築できている点が強みといえます」(メガバンク系ファンドマネージャー)

 同社は今後の成長戦略として、大型アニメコンテンツのメディアミックス展開や海外展開の拡大などを掲げている。

急成長に体制が追い付かず?

 そんな同社の下請け事業者への不当な行為が明るみに出た。前述のとおり、契約では確認できない「やり直し」を無償で何度もやらせたり、納品から1年以上も代金を支払っていない事例が発覚。下請け事業者からの納入後5日以内にカバーが検査を行うという契約条件になっていたにもかかわらず、納入日から277日後に検査が完了したり、検査期間を経過した後に無償で「やり直し」をさせたりするケースもあった。下請法では、最長でも受領日を起算日として60日目までに支払期日を定めて代金を支払う必要がある。
 
 カバーは公取委からの指導・勧告を受けてリリースを発表。「事業が急拡大し取引件数が増大したのに対し、取引先とのやりとりに抜け漏れや遅延が生じてしまっていた」などと説明している。

「カバーは常に膨大な数のコンテンツ制作やイベント企画を進行しており、動画だけで年間1万本以上の動画を投稿しているとみられます。これにグッズ販売や各種メディアミックス案件、イベントもあります。カバーの全社員約400人のうち、仮に300人がクリエイティブ業務に携わっているとして、所属VTuverは40名近くおり、多くの外部クリエイターとやりとりしながら複数の案件を同時並行で進行するなかで、一つひとつの下請け事業者との検収や支払いといった事務的な事柄がおざなりになっていた可能性があります。下請け事業者に制作完了の通知後も無償で修正させた理由について、カバーは『VTuberが修正を希望しているから』だと公取委に説明しているということなので、カバーがVTuberにきちんと下請法の内容を周知していなかった面もあるでしょう。

 同社は設立からわずか8年で売上300億円の規模に急成長を遂げており、そのスピードに社内の業務体制や手続きプロセスを含めさまざまなものの整備が追い付いていないのでしょう。11月にはフリーランス新法が施行され、これまで以上に発注先との適正な取引を求められるため、今回の件を契機に“普通の会社”に生まれ変わって、さらなる成長につなげてほしいです」(デジタルマーケティング会社プロデューサー)

(文=Business Journal編集部)

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