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GMO、生成AIの業務活用で17万時間を削減…AI人材創出と大幅コスト削減

2025.05.09 2025.05.11 13:45 企業
GMO、生成AIの業務活用で17万時間を削減…AI人材創出と大幅コスト削減の画像1
「Unsplash」より

●この記事のポイント
・GMOインターネットグループ、従業員の9割が生成AIを業務に活用し、1人あたり月間約32.2時間を削減
・グループ内の非エンジニアを中心に716人のAI・RPA人財が生まれた
・2024年は合計で18億円分のコスト削減(+価値創造)の目標を達成

 GMOインターネットグループは従業員の9割が生成AIを業務に活用し、グループ全体での月間の削減時間が約17.7万時間に上り、1人あたり月間約32.2時間を削減した。AIを活用している従業員の過半数が、ほぼ毎日、生成AIを活用しているという。同社はAI人材の育成にも力を入れており、2024年2月からオリジナルのリスキリング施策として短期AI人材育成プログラム「虎の穴」を展開し、今年1月までにグループ内の非エンジニアを中心に716人のAI・RPA人財が生まれたという。具体的に生成AIをどのように活用して業務時間を大幅に削減したのか。また、業務時間の削減によって、どのような効果が生じているのか。同社に取材した。

●目次

生成AIを活用する際に障害(ハードル)がないということを徹底

 生成AIの活用に積極的に取り組むGMOインターネットグループが、同社のパートナー(正社員、契約社員、アルバイト、派遣社員、業務委託)6422人を対象に実態を調査した(有効回答5276人)。生成AIをどのように活用して業務時間を削減したのか。同社に聞いた。

「グループ会社ごと、また職種ごとに内容が変わってしまうため一概にはお話しできないのですが、パートナー(GMOインターネットグループでは、従業員のことをパートナーと呼んでいます)一人ひとりの創意工夫の積み重ねでこの数字ができていると感じます。 アンケートの回答では、文章作成や翻訳業務、アイディア出しの初期フェーズ、調査などで活用していることが多いです。 特にグループ会社であるGMO天秤AI株式会社が提供している、複数の生成AIを活用・比較できる『天秤AI』では、生成AIごとの異なる視点からの提案を比較し、一つの視点だけでは見えなかった新しい気づきやアイディアを得ることができています」

 大幅な削減が実現できた要因として、従業員がAIを活用する際に障害(ハードル)が生じないことを徹底した点があげられるという。

「アンケートを取る際に『削減時間』に対する目標や想定は持っていませんでしたが、『活用率』に対して定量目標を持って、活用率を高めるための環境の提供をしていました。 活用率を高めるための環境づくりとしては、以下のような形です。

・グループ全社が安心して使える環境(安心して情報が入力でき、最新AIと連携しているSlack で使える各種AIアプリの提供、最新AIツールの各種ガイドラインの提供)

・誰でも簡単に使える高性能AIツールの環境(AI熊谷正寿「GMOイズムくん」や高性能な議事録・要約ツール)

・学べる環境(毎月開催しているGMO AIセミナー、オリジナルテストのGMO AIパスポート、AI関連の書籍が700冊以上揃った図書館GMO Libraryのリニューアル、リスキリングプログラム・社内研修「虎の穴」)

 このように、活用しやすい、活用したくなる、活用する際に障害(ハードル)がないということを徹底した結果、大幅に削減時間が増加し、現在も増加し続けていると考えております。 なお、定量的な目標としては、別途『AI活用アクション』という形で、GMOインターネットグループのグループ各社それぞれがAI活用によるコスト削減と価値創造の目標を設定し、進捗管理をしています。2024年は合計で18億円分のコスト削減(+価値創造)の目標を達成しました」

空いた時間を何に使うか、という新たな価値創造に重きを置く

 生成AI活用で業務時間が削減されることにより、どのような効果が生じているのか。

「削減により、空いた時間で新たな業務に取り組む人がでてきていると感じます (配置転換含む)。例えば、もともとカスタマーサポートを対応していた人が、対応をAI化する中で、プロンプトエンジニアリング能力が高まり、AIエージェントを開発する人財に成長するといった事例があります。グループ各社で設定しているAI活用アクションでも、2025年は、コスト削減よりも、空いた時間を何に使うか、という新たな価値創造に重きを置いています」(同)

 従業員への生成AI活用に関する教育などは、どのように行っているのか。

「以下に取り組んでいます。

(1)GMO AIセミナー
 2023年は月2回、24年以降は月1回、全パートナー必須視聴のAIセミナーを開催しています。

(2)GMO AI パスポート
 新卒パートナーおよび中途入社パートナーはオリジナルのテスト、『GMO AIパスポート』を必ず受験し合格することが必須となっています。 既存パートナーは、2023年10月に100%合格達成し、それ以降に入社する人に向けて問題と解説をアップデートしつつ運用をしています。

(3)その他、学びの環境としてAI関連書籍が置いてある図書館『GMO Library』やノウハウ共有の仕組みとして社内SNS『GMO Genius』を運営

(4)リスキリングプログラム『虎の穴』
 直近、最も力を入れている取り組みです。2024年から、非エンジニア向けにスタートしました。2024年は、生成AI,RPAといった固定プログラムを3カ月でマスターしてもらう形でしたが、2025年からは、学びたいテーマ別に深堀して学べる仕組みにしました。(下記参照)

 すでにAI活用率は90%を超えたので、単に活用しているか否かではなく今後は、活用している人が、『適切なツール選択をできているか?』『正しい使い方をできているか?』など、一人ひとりのAI活用力を高めていくことを意識しています」(同)

「虎の穴」、自身の業務に必要なコンテンツだけを選んで受講できる仕組み

 同社は今後も従業員による生成AI活用をさらに推進していくという。

「既存施策はバランスよく機能しており、成果も数字として明確に表れています。しかし、ここで安心して立ち止まるわけにはいきません。これらをさらに強化・進化させるべく、次なるステージへと踏み出さなければならないと考えています。

 例えば、リスキリングプログラムの『虎の穴』では、コンテンツの大幅強化(テーマの多様化)を進め、誰でも・いつでも・どこでも、自身の業務に必要なコンテンツだけを選んで受講できる仕組みの整備を行っています。 多様な職種やスキルセットに対応するべく、最適なAI活用環境の構築、ツールの提供、そして啓蒙・学習支援に取り組んでいます。 2025年は、AIが外部データやツールとシームレスに接続される時代への転換点となると感じていまます。AnthropicのMCPはその先駆けであり、この潮流をいち早く捉え、各種施策に反映させるとともに、AIエージェントが当たり前になる2026年を見据えたビジョンのアップデートも並行して進めていきます。

 また、業務効率化から、意思決定の迅速化に向けて利用を拡大しています。その一環として、AI 熊谷正寿『GMOイズムくん』を全パートナー向けに公開しています。GMOインターネットグループの社是・社訓であり、経営のノウハウやカルチャーが集約・言語化された『GMOイズム』を学習したClaude3をベースにしたAIです。判断に迷った時など、ここで問いかければ、GMOイズムに基づいたアドバイスを、AI熊谷正寿『GMOイズムくん』からもらうことができます。足元では、AI活用『率』という成果に満足することなく、その中身すなわち活用の『質』の向上を追求しています。GMOインターネットグループは、『AI活用力』No.1企業を目指し、本チーム『AIしあおうぜ!』がその先頭に立って牽引してまいります」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)