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SMBC、法人向け口座「Trunk」の衝撃…「銀行のメイン事業は融資」を大転換

2025.05.20 2025.06.01 06:54 企業
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三井住友フィナンシャルグループの公式サイトより

●この記事のポイント
・スマホから申し込みをして最短翌営業日での口座開設が可能
・経理業務、支払繰延、複数の資金調達手段の一元管理、公的費用の自動支払い、電子契約、決済、AIを活用した資金調達支援などをワンストップで提供
・振込手数料はSMBC宛てが無料、他行宛てが145円という業界最安値水準

 三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)が「これひとつで経営していける法人口座の新しい形」と謳う法人向けデジタル総合金融サービス「Trunk(トランク)」が早くも注目されている。5月に提供を開始する。中小企業がスマートフォンから申し込みをして最短翌営業日での口座開設が可能であり、法人ネット口座とビジネスカード、請求書処理・支払いなどの経理業務、支払繰延、複数の資金調達手段の一元管理、公的費用の自動支払い、電子契約、決済、AIを活用した資金調達支援などの機能をワンストップで提供。振込手数料はSMBC宛てが無料、他行宛てが145円という業界最安値水準に設定。これまで銀行にとって中心だった融資ではなく、決済や預金を主な収益源とする点が、大きな挑戦だ。具体的にどのようなサービスなのか。また、SMBCグループは300万社ある国内法人数の10%にあたる30万口座を3年で獲得するという目標を掲げているが、勝算はあるのか。SMBCグループに取材した。

●目次

Oliveのノウハウ

 SMBCグループが「経理業務の効率化、資金の見える化、資金繰り支援など、単なる銀行口座、カードに留まらないおカネ周りのサービスを一体で提供する」と宣言するTrunkの機能・サービスは多岐にわたる。例えば、受領した請求書を撮影するだけで自動的にデータ化・振込予約を行える機能、同じアプリ上で支払期日を繰り延べ可能にするカード決済連携機能、複数の資金調達手段を一元的に管理できる「フレキシブル・ファイナンス機能」などが搭載。「デジタルファクタリング」、カード払いの引き落とし時期を調整できる「スキップ払い」などもある。AIも活用され、AI与信エンジンを搭載したビジネスカード、AIエージェントによる経営支援も提供される。

 Trunk開始の背景には、SMBCグループが2023年から提供する個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」の成功がある。開発には、わずか2年で500万口座を獲得したOliveのノウハウが存分に生かされている。

会社経営に必要な金融・決済サービスをシームレスに提供

 具体的にどのようなサービスなのか。SMBCグループは次のように説明する。

「一点目は、Trunkは『法人口座』。メガバンクでは初めて、ネットでのお申込みにより最短翌営業日に開設が可能となり、振込等の手数料も業界最低水準で提供するなど、幅広いお客さまに三井住友銀行をお気軽にご利用頂ける口座。二点目は、会社経営に必要な金融・決済サービスを、デジタルでシームレスに提供する点。ハイスペックなビジネスカード、最新の経理DX機能、商売の状況に応じた多様なファイナンス機能など、会社経営に必要な金融・決済関連機能を一つのアプリにシームレスに融合するコンセプト。例えばカードは、利用限度額が最大10億円、最高水準の不正利用対策、直感的なユーザーインターフェースなどを実現し、Trunkがあれば『最新の機能を、納得のコストで使える』、そのようなサービスを目指した。

 三点目は先進性。Trunkは新しい機能をふんだんに取り入れ、いままでにない利便性を実現する。例えば、受領した請求書をスマホで写真にとるだけで、データ化されて取り込まれ、振込予約まで完了する機能、あるいは、支払の際に、アプリ上でカード払いを選択するだけで、支払期日を繰延べられる機能などを今後搭載予定。こうした請求書処理に関するデジタルサービスは、全て無償で利用可能。その他にも、複数のファイナンス商品から自分に最適なファイナンスを選択できる『フレキシブル・ファイナンス』機能、経営者の皆さまをサポートするダッシュボード機能等、利便性に富んだ機能を続々と用意していく。さらに、こうした様々な機能について、TrunkはAI-agentをはじめとしたAIの技術をふんだんに取り入れ、『お客さまにAIを意識することなく使いこなして頂く』ユーザー体験を提供していく」

 同サービスを始めるに至った背景は何か。

「Trunkの狙いは、法人のお客様が抱える『おカネに関する手間と不安』を解消して本業に集中していただくこと。SMBCグループは重点課題の一つとして、日本の再成長にコミットしているが、日本の再成長を確たるものにしていくためには、日本経済の強さの根幹である中小企業を含む幅広い事業者のさらなる活性化が欠かせない、と認識している。SMBCグループのビジネスという観点では、法人の決済性預金を獲得することが狙い。Trunk は法人のお客さますべてが対象だが、最も社数が多い、年商2億円、従業員10名規模の法人のお客さまにとっての使いやすさを追求している。

 また、Trunkを通じて、対面営業が主体である大企業取引を含む、ホールセールビジネス全体のデジタル化のドライバーにもしていく。デジタルでのサービスを提供するTrunkをきっかけに、大企業取引と共通する各種手続きやコールセンター業務などの機能を抜本的に効率化していく」(同)

AI-agentをはじめとしたAIの技術をふんだんに取り入れる

 特徴の一つが、AIやDXなどを活用している点だ。

「Trunkは新しい機能を積極的に取り入れ、いままでにない利便性を実現する。様々な機能について、TrunkはAI-agentをはじめとしたAIの技術をふんだんに取り入れ、『お客さまにAIを意識することなく使いこなして頂く』、異次元の体験を提供していく。 具体的な活用技術については非開示だが、生成AIなどは活用する」(同)

 3年で30万口座獲得というのは、かなり高い目標値という見方もあるが、どう達成していくのか。

「3年で30万口座という数字は、約300万社といわれる国内法人数の10%程度となっているが、既存口座保有先からの切替を含めての計画。従来の法人営業のような対面ではなく、デジタルマーケティングを中心としてお客さまと関係を構築し、国内随一の幅広いご支持を頂けるよう、努力していく」(同)

 メガバンク関係者はいう。

「メガバンクのなかで三井住友銀行はこれまでも、みずほ銀行や三菱UFJ銀行がターゲットにしない中小規模の企業にも積極的にアプローチする傾向があり、基本的にはその延長線上にあるサービスといえる。かなり前から銀行各行は利益が出にくくなった融資ビジネスから資産運用ビジネス・決済ビジネスへの転換を図っており、Trunkを通じてより多くの預金を集めることで、総合的な資産運用の提案などを行うことによってビジネスの拡大につながる可能性も出てくる。また、小口のファイナンスはAIの導入が進むにつれてより高度かつ精緻なリスク管理ができるようになったことで、利益が出やすくなりつつある点も大きいだろう」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)