売上8千億円超、CTCの業績拡大が止まらない…NRIを抜きSIerトップに浮上?

●この記事のポイント
・CTC、25年3月期連結決算の売上収益・営業利益いずれも過去最高を更新
・26年3月期は売上収益ではNRIを上回り専業SIerとしてはトップに躍り出る公算
・ビジネスモデル別売上収益としては「製品販売」が全体の約4割を占めるのが特徴
SIerの伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の業績拡大が止まらない。同社は伊藤忠グループのIT部門の中核企業。25年3月期連結決算の売上収益(売上高に当たる)は前期比12%増の7282億円、営業利益は18%増の676億円でいずれも過去最高を更新。26年3月期は売上収益が前期比13%増の8250億円、営業利益が15%増の775億円の予想となっており、売上収益では野村総合研究所(NRI)を上回り(NTTデータを除く)専業SIerとしてはトップに躍り出る公算となっている。CTCとは、どのような企業なのか。また、業績が拡大している主な要因は何なのか。同社に取材した。
●目次
すべての事業グループで業績が伸長
もともと海外の最先端のIT製品の販売に強かった伊藤忠テクノサイエンスと、システム開発会社のCRCソリューションズが2006年に経営統合するかたちで生まれたCTCは、伊藤忠グループのIT部門で中核的な役割を担う企業として知られている。現在は生成AI基盤構築支援、セキュリティ強化、ネットワークの高度化、クラウドサービス、システム開発など幅広く手掛け、製造業・通信・電力・運輸・官公庁・金融機関など幅広い顧客層を持つ。25年3月期のビジネスモデル別売上収益としては「サービス」が2628億円、「開発」が1612億円、「製品販売」が3042億円とバランスよく稼いでいる。今年度はクラウドネイティブ、セキュリティ、データ&アナリティクス、高度AIを注力4領域におけるビジネスを拡大し、計画として「売上8000億円超を達成し、トップSIerとしての地位を確立する」と定めている。
業績拡大の要因は何か。同社に聞いた。
「当社グループのお客様が、製造・金融・情報通信と非常に広範囲でして、広い顧客基盤のDX需要を捉えられたという点が大きいと考えております。当社の組織はお客様の業種ごとに5つの事業グループに分かれており、すべての事業グループで売上収益が伸びています。
お客様側のDX需要の高まりが追い風でもありますが、加えて生成AI基盤の構築支援、通信キャリア向けのネットワーク高度化をはじめ、弊社の得意分野であり、同業他社があまりリーチできてない領域で売上を伸ばせたことも大きいです。今後AI領域では生成AI基盤の構築のみならず、AIエージェントのサービス開発やアプリケーションの提供に注力をしていきます」
製品販売のポートフォリオが大きい
CTCの特徴として、ビジネスモデル別売上収益としては「製品販売」が全体の約4割を占める点があげられる。
「前身の伊藤忠テクノサイエンスはもともと米国から最先端のIT製品を輸入して日本でお客様用にカスタマイズして販売するという事業がメインであり、その流れをくむ製品販売事業が現在でも脈々と続いています。06年にCRCソリューションズと経営統合してからはシステム開発やクラウドサービスなども手がけています。製品が売れることで保守・運用も同時に伸び、すべてのビジネスモデルがしっかりと拡大してきています。
当社はSIer業界では珍しいビジネスモデルであると考えております。システム開発や、保守・運用、クラウドなどのサービスも提供しておりますが、なかでも製品販売のポートフォリオが大きいというのは、差別化の要因です。
09年ぐらいからクラウドサービスが拡大しはじめたところで、ハードウェア販売の縮小を懸念して、多くの企業が製品販売の比率を見直す動きがありました。当社は引き続き米国の最先端技術を発掘して、製品販売をしっかり伸ばしていくことに注力してきた結果、売上が右肩上がりで成長して過去最高の更新につながったと考えています。一方で、上流工程の付加価値の高いビジネスを伸ばしていく戦略を実行し、実績も積み上がりつつあり、ビジネスモデルの進化も着実に実施しています」
25年3月期決算資料のなかには「(25年度に)トップSIerとしての地位を確立する」との文言が見られるが、業界1位を目指すという意識は社内で強いのか。
「やはりナンバーワングループというのを強く意識しております。売上収益では競合他社さんを上回る計画となり、トップSIerとしての立ち位置を確立することを目指しています」
伊藤忠商事はCTCの価値を高いと認識
大手SIer関係者はいう。
「23年に伊藤忠商事は約3800億円を投下してCTCを子会社化したが、それだけ伊藤忠商事はCTCの価値を更に高められると認識しているということ。もっとも、もしCTCが今年度にトップSIerになっても、競合するNRIやNTTデータ、そしてアクセンチュアをはじめとする外資系との競争が激化しており、CTCは生き残りをかけて事業拡大へのドライブを強めていく必要がある」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)