「なんとなく不調」の原因は腸かもしれない…マイクロバイオーム解析で新健康習慣

●この記事のポイント
日本アムウェイとHEM Pharma Japanは、腸内マイクロバイオーム解析に基づき6種類の乳酸菌サプリから最適な製品を提案するパーソナライズドサービス「my LAB PLUS BY nutrilite」を展開している。9万5000件超のデータベースと独自アルゴリズム「PMAS」を活用し、腸内細菌の可視化と生活習慣改善を組み合わせた次世代ヘルスケアの可能性を探る。
およそ50人の男女参加者と運営スタッフ、さらにMCも加わって、人々はゆったりと規則正しく上半身を動かし始めた。演者のかけ声が柔らかに響くなか、一斉に息を吸い、そして吐く。エクササイズの目的は整腸である。
「吸って、吐いてと普段無意識に行っている呼吸は、息を吸う時に肺が膨らんで、横隔膜というは下がり、息を吐く時に横隔膜は元の位置に戻ります。この作用を知るだけで、だいぶ呼吸をしやすくなります」
演者を務めたのは「YogaSix / Pure barre」マスタートレーナーのセーリィー・クリスティーナ美怜氏である。氏によるワークショップ「内側から整う美腸コンディショニングヨガ」は、腹式呼吸から静かに幕を開けた。
セーリィー氏の指導のもと、参加者たちは腹式呼吸や腸を意識したエクササイズを実践。呼吸法の実践を経て、ヨガのエクササイズに入り、40分にわたって20項目近くが丁寧に実践された。終えた後には、身体が静かに解きほぐされてゆくような、おだやかな感覚が全身を満たした。
6月13日、JR渋谷駅近くの住宅街に佇む「HOTEL EMANON」のイベントスペースは、その日ばかりはヨガスタジオの趣を帯びていた。日本アムウェイ(東京都渋谷区)とHEM Pharma Japan(東京都渋谷区)が13日と14日の2日間にわたって共催した「One & Only マイクロバイオーム ラボ」——その一セッションとして、このワークショップは催された。イベントの眼目は、5月に発売された次世代パーソナライズドサービス「my LAB PLUS BY nutrilite」の普及促進にある。
●目次
6種類の乳酸菌サプリメントはパーソナライズド・ソリューション
このサービスは、6種類の乳酸菌サプリメント「パーソナル プロバイオ™」のなかから一人ひとりに適したタイプを提案し、あわせて生活習慣アドバイスを提供するパーソナライズド・ソリューションである。その特徴は、4つに集約される。
第一に、簡単な3ステップで自分に合った選択が可能なことだ。「調べる・知る・始める」という3段階の構成のもと、「みんなに同じ」ではなく「あなたに合った選択」を導くことを理念としている。まず便サンプルを研究所に送り、自分の腸内マイクロバイオームを詳しく調べる。次に分析結果レポートで自らのマイクロバイオームの傾向を知る。そして分析結果に基づいて選ばれた「パーソナル プロバイオ™」と、健康習慣質問票の回答から作成されたアドバイスによって、自分に合った健康習慣をスタートさせる。
マイクロバイオームとは何か。国立研究開発法人・産業技術総合研究所が運営する「産総研マガジン」によれば、土壌や水中、そして体の表面や腸内に存在する微生物コミュニティであり、多種多様な微生物から構成され、適度なバランスをとりながら周囲の環境に影響を与えているという。
第二に、腸内マイクロバイオームを可視化することである。腸内細菌の菌の種類と量、短鎖脂肪酸バランスに着目し、マイクロバイオームの健康スコアや傾向を見える化する。健康習慣質問票の回答に基づく生活習慣のアドバイスは、専用アプリを通じて届けられる。
第三に、長年の共同研究とデータ解析に裏打ちされた科学的アプローチである。日本アムウェイの親会社・アムウェイ(米国ミシガン州)の栄養補助食品ブランド「ニュートリライト™」とHEM Pharma社の共同研究のもと、300種類以上の菌株から安全性と有用性を基準に厳選。HEM Pharma社(韓国・京畿水原市)が開発した技術「PMAS」(Personalized Pharmaceutical Meta-Analysis Screening=患者別に最適な薬や用量を選ぶメタ解析手法)を用いて40通りの組み合わせを3200件以上にわたって検証した結果、最終的に6製品へと絞り込まれた。
第四に、腸内マイクロバイオーム全体を見据えた設計であることだ。日本人の腸内環境に適した2〜6種類の菌株(50億個の生きた善玉菌)、食物繊維、オリゴ糖が配合されている。
9万5000件超の世界最大級のマイクロバイオームデータベース
こうした4つの特徴を持つ「my LAB PLUS BY nutrilite」を共同開発したアムウェイとHEM Pharma社は、2025年8月、戦略的提携を発表した。
HEM Pharma社は2016年に設立された腸内マイクロバイオームに特化したヘルスケア企業である。アムウェイの支援のもと、韓国で9万5000件を超える世界最大級のマイクロバイオームデータベースを構築し、創薬プラットフォーム事業や受託開発を展開してきた。2024年11月には、KOSDAQ市場への上場を果たしている。
日本においても、ユーザーデータの収集とフィードバックの体系化を目指している。この提携によって、PMASアルゴリズムの精度向上とデータベースの拡充を図るとともに、韓国のデータと比較しながら、多様な人種やライフスタイルに対応したグローバルモデルへの進化が構想されている。アムウェイとの共同開発プロジェクトは、8年前にすでにその歩みを始めていた。
アムウェイは一方で、栄養補助食品、スキンケア、オーラルケア、空気・水の浄化などのコア事業領域を支えるべく、イノベーションのエコシステム拡充に注力している。先端的な植物栄養素、ヘルスアセスメント技術、健康寿命延伸のソリューションといった分野で、スタートアップ企業やイノベーションリーダーとのパートナーシップ締結を積極的に進めているのである。
日本アムウェイの2025年12月通期の売上高は739億円。事業別の売上構成比は、ホームケア2.46%、ハウスウェア18.26%、パーソルケア(化粧品含む)22.72%、栄養補助食品54.44%、その他2.11%となっている。イリーナ・メンシコヴァ社長は、HEM Pharma社との戦略的提携の意義をこう語る。
「アムウェイは日本で60万組以上のお客様に支えられ、腸の健康を含む幅広いウェルネス事業を展開してきました。HEM PharmaのPMAS技術が加わることで、より精度の高いパーソナライズド・ヘルスケアが実現できると確信しています。急速な高齢化が進む日本では、健康寿命の延伸は大きな課題です。栄養・運動・睡眠を組わせた包括的なプログラムを提供します」
整腸の新たな知見高齢化社会に射し込む光明
腸と健康の関係を考える時、着目したいのが京都府京丹後市の高齢者たちの存在である。京丹後市の発表によると、25年9月1日時点で市内の100歳以上は121人。人口10万人当たりに換算すれば全国平均の約3倍、京都府平均の約2.8倍という驚くべき数値に達した。京都府立医科大学と京丹後市が共同で実施した「京丹後長寿コホート研究」——65歳以上の市民を対象にしたこの調査は、腸内フローラの解析において、伝統的な食生活を背景に、京都市内の高齢者と比べて酪酸菌が有意に多いことを報告している。
現時点では酪酸菌と長寿との因果関係は解明されてはいない。しかしながら、フレイル傾向など老化に関わる指標が低い可能性が示唆され、その事実は静かな重みをもって受け止められるべきだろう。
2日間にわたるイベントでは、会場内に設置されたタブレット上の問答を通じて自分の腸小野 貴史タイプを簡単に知ることのできる診断コンテンツに、来場者が自然と足を止めた。腸内環境にまつわるプログラムは、ヨガのワークショップのほかにも、「腸が変われば、未来が変わる。”なんとなく不調”を卒業する美腸習慣」(日本美腸メソッズ協会 代表理事 田和璃佳氏)、「腸内マイクロバイオームと宿主の相互作用 〜疾患との関連性に関するエビデンス〜」(広島大学病院 未来医療センター 特命准教授 東川史子氏)、「マイクロバイオームの基礎知識」(建国大学医学部助教授・薬学博士 キム・ジュウォン氏)が提供された。
新たな知見が腸の健康に寄与し、日本列島の隅々にまで届く時、それは高齢化社会に射し込む一条の光明となるかもしれない。
(取材・文=小野貴史)











