原田氏は社長在任時代、サプライズ重視のマーケティングでマクドナルドを「デフレの勝ち組」に押し上げたが、ここ数年は販売戦略がことごとく不発に終わっていた。
原田氏は東海大学工学部通信工学科を卒業後、外資系企業を渡り歩きマーケティングの腕を磨いた。アップルコンピュータ(現アップル)日本法人社長だった原田氏は、そのマーケティングの手腕を買われ米マクドナルド本社にヘッドハンティングされた。アップルの主力製品マッキントッシュの愛称がマックだったことから、この移籍は「マックからマックへの華麗な転身」と話題になった。
2004年5月に持ち株会社と事業会社の社長に就任した原田氏は、創業者の故・藤田田氏の経営体制を徹底的に破壊した。年功序列を廃止し、古参社員には「新しいバスに乗るか」と迫ったため、荒療治に社内から反発が噴出した。だが、原田氏はわずか1年で社内を掌握し、原田流の斬新なマーケティング手法を駆使してみせた。
05年に導入した「100円マック」はワンコイン商品の先駆けとなった。ハンバーガーやコーヒー、アップルパイなど100円の低価格メニューで集客して、リピーターとなった顧客に高価格商品を売り込む。こうしたマーケティング戦略が功を奏し、8年連続既存店売上高のプラスを達成。その手法は「原田マジック」と呼ばれた。
だが、“神通力”が衰えた。12年12月期の既存店売上高が9年ぶりにマイナスとなることが判明すると、12年11月、商品・価格戦略を転換。これまでの低価格の季節限定メニューの投入を抑え、採算のよいビッグマックなど定番メニューの販促に舵を切った。しかし、低価格の新商品の投入を減らしたことが裏目に出た。既存店売上高は大きく落ち込み、客数、客単価ともに前年実績を下回った。
これを受けマクドナルドは昨年5月から100円バーガーを120円に値上げする一方、マックフライポテトなど割安な100円台の商品を拡充した。低価格商品の品揃えを強化して集客力を高め、定番品を値上げして客単価を引き上げ、既存店の売り上げ増につなげる考えだったが、この戦略も不発に終わる。その原因について昨年8月9日の決算発表の席上で原田氏は「メディアが『100円マックは消えた』と報道したせいではないか」と恨み節とも受け止められるコメントを出し、話題となった。
●2期連続減収減益の意味
日本マクドナルドHDが今月2月6日に発表した13年12月期連結決算の売上高は、前期比11%減の2,604億円。営業利益は53%減の115億円、純利益は60%減の51億円となったが、この純利益の水準は06年12月(57億円)以来の歴史的な低さである。既存店の売り上げがマイナスで推移したことが業績失速した原因である。前年同期から2期連続の減収減益は、原田氏が04年にトップに就任して以来初めてである。
今回、原田氏がトップの座を退くのは、業績不振の経営責任をとったからだとみられている。デフレの勝ち組企業の失速は、デフレ時代の終わりを象徴しているとの見方もある。