●「キッズ&ファミリー」路線への舵切り
原田氏の後任となるカサノバ氏は、業績アップのための最優先課題に、メニュー開発の強化を挙げている。今年1月からは、古き良き時代の米国をコンセプトにした「アメリカンヴィンテージ」キャンペーンを始めた。第1弾は1950年代、第2弾は70年代、第3弾は80年代のハンバーガーを発売する。
今年1月の既存店売り上げは前年同月比3.4%増と7カ月ぶりにプラスに転じた。「アメリカンヴィンテージ」の高価格ハンバーグが好調で客単価が同9.2%伸びた。しかし、客数は依然として同5.3%減である。魅力ある新商品を増やすことで、14年12月期は既存店売り上げをプラスにするとカサノバ社長は意気込む。
そのため、不採算店を143店閉鎖し、200店を改装し、「キッズ&ファミリー」路線をとる。13年12月期比2倍の100億円をかけて店舗を改装し、50店に子どもの遊技場を設置する。カロリーが低めで「子供と一緒に来る母親も気に入るメニューを増やす」予定だ。不採算店の閉鎖で連結売上高は2,500億円と前期比4%減るが、営業利益は同1.5%増の117億円を計画している。
●止まらない客数減
増益のシナリオは既存店の回復を前提にしているが、現在マクドナルドが置かれる環境は厳しい。大手コンビニエンスストアチェーンは軒並み低価格コーヒーの販売に注力し、サンドイッチやパンなどとの組み合わせ割引でマクドナルドをはじめとするファストフードチェーンの客を奪った。家族連れがメインターゲットのファミリーレストランも、景気回復で前年比プラスの月が続いている。加えて、マクドナルドの既存のメインユーザーが高齢化してしまい、新たな需要を掘り起こせないことが不振の原因との指摘もある。
カサノバ氏がマクドナルド再生策として打ち出したのは、主力のハンバーガー類について地域ごとの価格差を広げることだった。海外の店舗では立地に応じて価格を変えることが多いが、同社は駅前やロードサイド、商業施設内など商圏ごとに9つに価格を細分化。看板商品「ビッグマック」の単品価格は地域によって290~340円の4段階になっていたが、改定後は310~390円の7段階になった。価格見直しの対象になったのは全店舗の4割。これにより売り上げが1%増えると見込んでいた。値上げが受け入れやすい地域で高くし収益の改善につなげるのが狙いで、昨年9月13日から新しい価格モデルに移行した。
だが、新価格導入後の昨年10月、既存店売上高は前年同月比で9.7%のマイナス。11月は同10.4%減、12月も同9.0%減と続落したが、なかでも深刻なのが客数の減少で、10月13.9%減、11月は14.4%減、12月が12.1%減と大きく落ち込んだ。
客数の落ち込みの幅は原田氏が値上げした時よりも拡大し、結果的に再値上げで客足がさらに遠のくという悪循環に陥った。正念場を迎えているマクドナルドを、カサノバ氏は立て直すことができるのか、その手腕に注目が集まっている。
(文=編集部)