無印良品の強さの源、徹底した仕組みづくりとマニュアル化の秘密~松井会長に聞く
マニュアルという言葉が悪いイメージを持たれる理由は、「画一的であり、創意工夫は排除される」という冷たい印象を与えるからではないでしょうか。多くの企業や店舗でマニュアルを作成していますが、時間とコストをかけてマニュアルをつくっても、半年~1年もたてば経営を取り巻く環境は変わっていきます。すると現行のマニュアルでは対応できなくなり、使われなくなります。結果、マニュアルは会社の中で埃をかぶっているだけになってしまいます。
MUJIGRAMの内容は、社員の創意工夫やお客様の意見を受けて、どんどん変わっていきます。スタッフが日々の業務の中で改善が必要だと思ったことは、店長に伝わり、そこから地域の店舗をまとめる営業課長に上がり、最終的に本社で採用可否を決定するかたちで常に進化していっています。店舗の現場では「自分ならこうやりたい」という意見が社員から生まれ、そうした意見を会社の中で生かす仕組みになっているのです。
つまりMUJIGRAMとは単なるマニュアルではなく、会社のオペレーションの仕組みであり、標準なのです。100人いたら100通りのやり方ではなく、1つのやり方が決められていて、もっと良いやり方があれば、それが新しいやり方になっていくのです。
現在、2000ページちょっとのMUJIGRAMですが、毎月22~23ページずつ更新されていきます。割合でいえば全体の約1%、1年に直すと12%になります。芯を定めつつ、「見える化」「標準化」したものがMUJIGRAMなのです。
●経験主義との決別
–MUJIGRAMは、01年に初の赤字に陥った良品計画の再建策としてつくられ始めたのでしょうか?
松井 実はこのMUJIGRAMは、1994年に無印良品事業部長時代の私が声を上げてつくり始めたものでした。私は01年に弊社が大きな赤字に陥った時に社長へ就任しましたが、社内を見渡すと経験主義がまん延していました。それでは進化していくことはできません。市場にはライバルとお客様しかいません。ライバルに勝ち、お客様に喜ばれるには、企業は進化していくしかありません。進化し、レベルを上げていくためにオペレーションの仕組みをさらに強化していこうと、積極的にMUJIGRAMを活用していくことにしました。
経験主義では、ノウハウなどは属人的です。どんなに優れたスタッフがいても、辞められてしまえば会社としての財産が失われます。しかしMUJIGRAMで標準化することで、優れたスタッフのレベルにまで、すべての人たちが到達することができるのです。