ドコモの2014年3月期の売上高は前年同期比3.8%増の4兆6400億円、営業利益は0.3%増の8400億円にとどまる見通し。競合他社への顧客流出が4~12月期に101万件に達し、通信事業の不振をコンテンツなどで補う決算となった。
対するソフトバンクは、営業利益が前年同期比1.5倍の1兆円を上回ると予想している。子会社化したゲーム会社、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの株式再評価で2539億円の評価益を計上することで利益を押し上げる。加えて、売上高は米携帯電話、スプリントの買収が寄与し、前期比1.8倍の6兆円以上になる見通し。売り上げベースでドコモに1兆4000億円の大差をつける。ソフトバンク社長の孫正義氏は2月の記者会見で、「これからは強者として事業を進めていく」と表明をした。ソフトバンクは06年に携帯電話事業に参入した際、「10年戦争」に挑むと宣言したが、競合するKDDIとドコモを抜き去りトップに躍り出ることでシナリオは完結する。
業界2位に転落したドコモの背後には、au(KDDI)が迫る。KDDIの14年3月期の売上高は、前年同期比16.9%増の4兆2800億円、営業利益は同28.7%増の6600億円の見込みで、ドコモとの売り上げの差は3600億円。KDDIの追い上げ次第では、ドコモは3位に転落しかねない状況だ。
●年間約5000億円減収の衝撃
ドコモは10年前には国内携帯電話市場で55%のシェアを握っていたが、13年9月には41%までシェアが低下した。ドコモを苦境に追い込んだのは、米アップルのスマートフォン(スマホ)、iPhoneだった。10年にソフトバンクがiPhone 4を発売して以降、ドコモの顧客流出が止まらなくなり、11年にauがiPhoneを導入したことで流出はさらに加速した。
電話番号はそのままで他キャリアへ乗り換える制度、MNPを利用してドコモから他キャリアに移った顧客は、06年度の同制度開始以降、累計で580万人に達するため、ドコモは年間ベースで巨額の減収になる計算だ。
そこでドコモは13年9月、顧客流出を防ぐためiPhoneの扱いを始めたが、その後もスマホ販売台数は想定ほど伸びなかった。
ドコモの今年1月の契約純増数(新規契約から解約を差し引いた件数)は14万件で、12月の半分に落ち込んだ。純増数のトップはソフトバンク、2位はau、ドコモは3位に後退した。2月はドコモが2カ月ぶりに首位に返り咲いたが、3社ともiPhoneを扱うことで商品面での差異がなくなり、各キャリアから携帯電話販売店に支払う販促費の増減が売れ行きを左右する消耗戦の様相が強まっている。
●大規模グループ再編と個人向けサービス強化
そんなドコモは7月、大規模なグループ再編に踏み切る方針を固めた。全国に25社ある子会社を合併して12社程度に半減させ、子会社の合併や支社のスリム化で生じる最大3000人の余剰人員を、3年間で新規事業など成長分野に配置転換する。携帯電話市場の不振を、新規事業や法人需要の開拓で補うのだ。