同研究会のカジノ誘致構想では、HTB内のホテルヨーロッパに富裕層向けのカジノを設ける。家族・一般向けには、園内に新たに10階建て1352室を備えたカジノホテルを424億円かけて建設し、1万3000平方メートルのカジノフロアを2階~地下1階に設ける構想だ。中国、台湾、韓国からの旅行客を中心に関西以西の国内組も含め、年間500万人の集客と2544億円の経済波及効果を見込んでいる。
カジノ誘致を主導しているのがHTBの澤田秀雄社長(61)。格安旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)、格安航空会社スカイマーク(SKY)を起業したベンチャー起業家の、次なる挑戦がカジノだったのである。
HTBは10年4月、HISの傘下に入った。HISの創業者である澤田氏がHTBを引き受けた狙いがどこにあるのか、当初は、まったく見えてこなかったが、やがて、その意図が明らかになる。HTBへのカジノの誘致である。
カジノを核にホテル、ショッピングセンター、コンベンションセンターなど総合リゾート施設を整備し、海外を含めた客を呼び込み、地域経済を活性化する。シンガポールやマカオでのカジノの隆盛を受け、ハウステンボスをラスベガス風のカジノリゾート施設に生まれ変わらせるつもりなのだ。
澤田氏は園内に居住して陣頭指揮を執っている。HTBの2012年3月中間期決算は、営業利益が11億1800万円となった。初めて黒字化した前年同期の4倍の利益が出た。入場者数は87万5300人で0.4%の微増だったが、新アトラクションの導入などによって客単価が8242円へと2割伸び、売上高は24.0%増の72億1500万円。HISによる再建支援を機に佐世保市から認められた、再生支援交付金を加えた税引き後の利益は2.3倍の16億1800万円になった。これで12年9月通期決算は増収、増益が確実である。
澤田氏はHTBの業績好転、公海上でのカジノ営業と着実に手を打ち、国内でカジノが解禁になれば、ただちに走り出せる態勢を整えた。
しかし、カジノ誘致に強烈な逆風が吹きつけている。大王製紙の御曹司、井川意高前会長が子会社から引き出したカネをカジノにつぎ込んだ事件のせいである。ギャンブル依存症の怖さをまざまざと見せつけ、カジノ合法化への風当たりが強まった。
井川前会長が東京・六本木の裏カジノにはまったように、実は大都会には裏カジノがどこにでもある。反社会勢力の資金源となっている裏カジノを根絶するためにも、カジノを合法化して、法律で規制すべきだという意見もある。