●価格が企業の成功要因となる時代は終わり
ユニクロにしても俺のにしても、市場価格よりも安価な商品を提供している。一見すれば、価格優位性によって成功しているようにも見えるが、それは一面的な見方だ。100円マックなど低価格によって勝負に出たマクドナルド、200円台の牛丼で勝負に出たすき家をはじめとする牛丼チェーン店、居酒屋のワタミなどは苦戦を強いられている。業種を変えてみれば、一泊数万円する星のやが好調な一方、星のやよりも低価格ながらも廃業を迫られている老舗旅館も少なくない。価格が成功要因となっていた時代は終わりつつある。
その理由のひとつとして、「コモディティ化」が挙げられる。どの企業も、どの製品も、それなりの品質のものを低価格で販売、提供できるようになってしまった。その結果、消費者は以前ほど価格に魅力を感じなくなってしまっているのだ。以前から明らかにダメなものはもちろん淘汰されていたが、今では低価格でそれなりの品質でも淘汰される時代になりつつあるのだ。
●ユニクロ
先日、筆者は東京都内のショッピングモールの視察を行った。そこでは、あるカードを持っていると購入の有無にかかわらず駐車料金2時間無料のサービスを受けられるということだった。受付がなかったので、ある店舗に立ち寄り聞くと「僕は最近入ったばかりなのでわかりません」と答えられた。別の店では「ちょっとお待ちください」と言ったっきり、5分以上戻ってこなかった。探してみると、いつの間にか別の対応をしていた。ユニクロに行き質問すると「駐車券を貸していただけますか」とにこやかに答え、足早にレジのほうへ向かい1分もしないうちに戻ってきた。もちろん駐車券のサービスはつけられていた。他の2店もユニクロと同じような低価格を売りにするアパレル系ショップだったのだが、ユニクロとの差は歴然だった。それだけではない。ユニクロに行って感じたのは、店員が他店よりもキビキビとした態度で、スピーディーで的確な案内を行っているという点だ。
●俺のフレンチ
そして別の日に、俺のフレンチを訪れてみた。高級料理であるフランス料理をワンプレート1000円程度で食べることができる店だ。価格が安い代わりに、基本には立ち食いスタイルだ。経営としては、高い料理をお客にゆっくり食べてもらうのではなく、安く早く食べてもらいトータルでの客回転率を上げることで利益を確保しようという戦略だ。確かに安い金額に魅力を感じて訪れる客も多いと思うが、私が感じた魅力はそこだけではない。ごった返した店内でも客をしっかりと見て、注文を逃さないキビキビとした店員の姿勢が素晴らしかった。
また、筆者の訪問時にはいくつかのメニューが品切れだったのだが、注文時だけでなく会計時にも「申し訳ありませんでした」としっかりと謝り、店の外に出るまで店員が見送っていた。個人的には混雑した店内と立ち食いというスタイルはあまり慣れなかったが、店員のホスピタリティの素晴らしさに、機会があればまた訪問しようと感じた。