●想定外の好決算
情報家電大手8社の業績回復が鮮明だ。2014年4-6月期の連結決算で、パナソニックなどの営業利益が対前年で大幅増となった。パナソニックが28億円から822億円、日立製作所が45億円から801億円、ソニーが97億円から698億円と大幅な増益となった。
苦境に陥っていた情報家電メーカーは再生したのか。同期の日本メーカーの業績がよかったのには、2つの要因がある。
1つ目は、予想外の大きな駆け込み需要が寄与した点だ。勤労世帯でみると、消費増税直前である3月の駆け込み需要を推計すると一世帯当たり平均で約5万5410円。可処分所得の約36万9000円の約15%が余分に支出された。ちなみに全世帯の3月の駆け込み需要は計3兆円ほどである。エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの白物家電を中心に、前年同月比で倍以上の売り上げ増があったとみられる。その結果、ヤマダ電機などの大手家電量販店4社の配送遅れは商品代金ベースで1000億円に達した。この想定外の特需で、家電量販店各社の13年度の決算も久しぶりに増収増益に転じた。
2つ目は、企業向けの需要が好調であることだ。アベノミクスによる円安で輸出企業の収益回復、株価や地価の上昇による資産効果が発生した。その結果、企業の設備投資や需要が回復。具体的にはビッグデータなどの情報技術関連への投資、海外で伸びる自動車向けの車載機器や部品、発電や鉄道などのインフラ系、さらには集合住宅などの建設投資が伸びた。特に、2020年東京五輪に向けた建設需要は活発である。従って、企業向けの製品や部品の比重の高い、日立製作所、三菱電機、東芝などに加え、車載に強いパナソニックの業績も好調である。
このように情報家電大手の好業績は、主に短期的な駆け込みと景気が上向いたことによる企業向け需要の好調さを反映したものである。テレビなどの消費者向け事業をリストラし、企業向け事業にシフトして、駆け込み需要で少し潤っているのが実態だ。
●なぜソニーのひとり負けなのか?
一方、ソニーのように、白物家電を持たず、企業向け売り上げ比重が低い事業構造の企業は逃げ道がなく、いまだに構造的な問題に直面している。ソニーは14年度の最終損益も赤字予想を発表している。消費者向けAVなど黒物家電の不振を象徴するかのように、7月には中高年には懐かしい「オーディオ御三家」といわれた山水電気が破産した。
それでは日本メーカーは、消費者向けのICT(情報通信技術)を生かした事業は切り捨て、企業向けの部品供給によって生き残る道しか残されていないのか。1980年代、ウォークマンに代表されるオーディオ、ビデオ、テレビで世界市場を席巻した日本の情報家電メーカーの復活はないのか。
日本の情報家電メーカーが直面している共通の構造問題は、主に3つである。