05年に1880カ所あった民間フィットネスクラブ数は、10年には3574カ所と5年で90%も増えた(フィットネスビジネス調べ)。しかし、会員数の伸びが頭打ちの現状では、施設は今や過剰気味。メンバーの月会費だけでは利益をあげるのは心もとなく、客単価を増やせる収益源として物販に頼ることになる。
例えば、エアロビクスのインストラクターが新作のウェアを着て出てきて、「これは今年の流行のデザインだそうですよ」などと、まるでブティックの店員みたいなことを言ったりする。それで販売収入につながることを会社は期待する。
「スポーツする喜びを広げて、会員が増えれば働く私たちもハッピー」という建前とは裏腹の現実が、そこにはある。
「フィットネスクラブ適齢期」の人口は急減していく
フィットネスクラブの総人口に占める会員参加率は、アメリカは15.6%だが、日本は3.02%しかないというデータがある(「日・米・英の民間フィットネスクラブ産業市場データ」フィットネスビジネス/05年)。それを根拠に「成長の余地はまだある」と語る関係者は少なくないのだが、会員数を5倍どころか、2倍にするのも非常に厳しい。
なぜなら、アメリカと日本では人口の年齢別構成比がかなり違うからで、日本では50歳前後までの「フィットネスクラブ適齢期」の人口は、これから急減していく。
スポーツに対する意識も変わった。昔は、オリンピックで日本の選手が活躍すると、「自分も何か運動をやってみよう」「子どもにスポーツをやらせよう」と、フィットネスクラブやスポーツ教室の入会者が増えたというが、今はもうそんな時代ではない。収入の低下で生活に余裕がないと、スポーツをする気にも、させる気にもならない。スポーツと政治は別物かもしれないが、スポーツと経済は別物とはいえないのだ。
オリンピックという“夏祭り”が終わると、日本人はサッと、相変わらず不景気で消費税の増税が迫る現実の世界に戻っていった。
フィットネスクラブ新規会員は、「メタボ対策」「介護予防」の人ばかり?
実際、運動しようと思う人がいて、なおかつその人口も増えているのは、「メタボ健診」や「介護予防」で運動する必要に迫られた中高年や高齢者ぐらいだ。だが、そんな人を主要なターゲットにしようと思ったら、従来型の施設や企画や運営では対応しきれないので、また新たな投資が必要になる。
一体どこに活路を見いだせばいいのか、各社ともまだ試行錯誤の段階だろう。
フィットネスクラブ業界は業界再編を経験しながら、長らく成長が続いてきただけに、市場が頭打ちで利益が出なくなり、八方ふさがりの停滞は厳しい試練といえる。