ベネッセコーポレーションの顧客情報流出事件が話題になり、同時期に日本マクドナルドホールディングスが使用していた鶏肉の期限切れ事件も話題になったため、両者の会長を務める原田泳幸氏について批判的な論調が出ています。
そんな原田氏がスポットを浴びたのは2004年、アップルコンピュータ代表から日本マクドナルドCEO(のちに会長・社長兼務)へ転身した時でした。当時の日本ではまだ珍しい「外部招聘社長」として話題を呼びました。その後、稲盛和夫氏(京セラ→日本航空)、藤森義明氏(GE→LIXIL)、魚谷雅彦氏(日本コカ・コーラ→資生堂)、新浪剛史氏(ローソン→サントリー)らの事例も生まれ、やや毛色は異なりますがユーシンが2回もオーナー社長の後継者を一般公募したりなど、外部招聘社長はしばしば話題になってきました。
では、はたしてこうした外部から招聘された経営者は機能するのでしょうか?
「外から社長がやってくる」というのは有名企業での例が少なかっただけで、それ以前より企業再生の世界では多々ありました。当然ながらうまくいくケースといかないケースがありますが、成功する要因は、有名企業においても相通じる点と通じない点があります。もちろん経営者個人の能力や新しい経営戦略が正しいかという点は大きく作用しますが、今回はそれ以外の点について整理していきます。
●再生企業は動かしやすい?
企業が再生しなければならない局面では、典型的なケースではオーナー社長が責任を取って退き、新しいオーナーと経営者に替わります。新しいオーナーは事業会社であったり投資ファンドであったりしますが、そうした会社が経営者を直接派遣する場合もあれば、ヘッドハンターや個人のツテなどにより探して採用した経営者が着任する場合もあります。オーナーと経営者の母体が別というこの後者のケースが、外部招聘の経営者のパターンとなります。
その後、経営再建に向けた取り組みが始まります。あくまでも著者の持論ですが、着任した経営者が、能力面等において後述する最低条件さえ満たしていれば、一定レベル、少なくとも着任前よりは経営改善効果が出ます。「再生着手前」の状態からさらに悪化させる事態にはなかなかなりません。
その理由としてはまず、新オーナーも経営者も社員も、個別の局面においては違う方向を向くかもしれませんが、最終的には「何があっても会社を存続させなければならない」という同じ方向を向かざるを得ないからです。大多数の社員が“本当に”考えて、“本当に”行動し始めて、結果が出たらその反省をするというPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルが回れば、小さな失敗は出ようとも会社全体としては少なくとも過去よりは良い結果が出始めるようになります。新経営者の着任は、そうしたPDCAの推進力が生まれるきっかけとなります。
根本的に、不振状態に陥る会社の解決すべき課題・要因の大部分は、内部要因が占めています。8月12日付当サイト記事『社外取締役、なぜ“ちゃんとした人”は選ばれない?“お飾り”人気、日本企業の悲しき実情』でも述べましたが、外部要因はあくまでも業績悪化のきっかけであって、その悪影響を継続させてしまう原因は大体において内部要因にあります。業界全部の会社が沈む例は08年のリーマンショック級の限られたケースであり、同じ業界でも勝つ会社と負ける会社があるのはそのためです。