それでいて、元店長の報酬は、最初1件3000円かそれ以下に抑えていたというから恐れ入る。発覚したら手が後ろに回るリスクがあるから「もっと上げてくれ。さもなければ情報を出さない」と元店長がゴネて単価が4500円になり、6000円になったと報じられているが、悪の世界でも末端の“ワーカー”は、「ワーキングプア」を強いられるものらしい。
「小売価格」が10万円といっても、今回の事件で漏れた個人情報のうちの1件は、暴力団捜査を担当する愛知県警幹部自宅に電話をかけ、次女の実名を出して捜査中止を求める脅迫をするのに使われたというから、「客筋」と、それに伴うリスクの大きさからみて、「小売価格」には少なからぬプレミアムが上乗せされていたと思われる。
逆に、探偵業界のありふれた収入源である浮気相手の調査だと、「組織ではなく個人が依頼主なので、個人情報のお値段は10万円をかなり割り込むかもしれない」(前出の探偵業者)という。プレミアムがつく時もあれば、ディスカウントされる時もある。「モノにもよる」とは、そういうことだ。
ソフトバンクは他社より3割安い?
ちなみに、さまざまな探偵業者がウェブサイトを開設して宣伝している「携帯電話番号調査」の料金は、3万円台から10万円を超えるものまでまちまち。判明率が高いもの、住所や固定電話だけでなく生年月日や家族構成までわかるものは、それなりのお値段がする。中にはソフトバンクだけ3割以上安く提供している業者もあるが、「個人情報が豊富に入荷につき、特別ご奉仕」ということか?
前出の探偵業者の話に「オーダーされて」とあったが、実は個人情報の値段を大きく左右するのは、この部分である。オーダーメードで、ピンポイントの個人情報を、正確にスピーディーに提供できるなら、そこに大きな価値が生じる。
例えばAさんが、Bさんの住所と携帯電話番号の情報が欲しくて探偵業者に依頼したら、そこでBさんのピンポイント個人情報のオーダーが発生する。住所と、携帯電話番号についての正確な情報がスピーディーにもたらされたら、Aさんにとっては10万円、あるいはそれ以上の報酬を支払うだけの価値がある。1件10万円だからこそ、「中間搾取」されようとも、犯罪を犯してまで個人情報を引き出した携帯電話ショップの店長には、1件6000円が支払われるのである。
では、オーダーがなく、
「ソフトバンクの携帯加入者の氏名、住所、携帯電話番号が入った情報はいりませんか?」
と、個人情報を引き出した本人が売り込みに行ったら、1件当たりいくらになるのだろうか?