今や、会社設立は資本金1円でも可能となり、起業すること自体は敷居が低くなった。しかし、起業した会社の10年後の生存率はわずか5%といわれる今日、最も難しいのは会社を存続させること。リブセンス成功の裏には、倒産した企業が無数にあるのが現実だ。
そこで今回、20代でベンチャーを起業したものの、数年前、解散に追いやられたA氏に、
「ゼロから起業し、ベンチャーを運営していくということの難しさ」
「会社は、どのように壊れていくのか?」
について語ってもらった。
――会社を立ち上げたきっかけは?
A氏 大学生の頃、広告の仕事をしたいと漠然と考えていましたが、卒業後にたまたま小さな広告会社に契約社員として入社しました。何年か働いて、ノウハウも吸収したので、フリーランスとして独立しようと考えていたとき、大学の同級生だったBと「会社をつくろう」という話になりまして、Bが社長になって2人で立ち上げました。私自身は自発的ではなく、軽い気持ちでしたね。ただ、後でわかったのですが、実はBには込み入った事情があったんです。
――どんな事情ですか?
A氏 Bの知り合いの税理士で、かなりブラックな感じの人がいまして(笑)。脱税を目的に、一回お金をプールしておくための受け皿として、その税理士にそそのかされてBは会社をつくらないといけなくなったみたいでした。B本人にあまり自覚はなかったようですが……。
――会社の設立資金は、どのくらいかかりましたか?
A氏 資本金は、現在は1円でもつくれるので、登記申請や定款作成などのために司法書士に払う数十万円程度で済みました。
何も知らなくても会社をつくれる?
――ゼロから会社をつくるためには、どういうことが必要になりますか?
A氏 税金や会社法のこととか知ってないといけないのですが、ホント軽い気持ちで起業したので、細かいことはよくわかっていなかったですね。決算とかも、基本的には前出のBの知り合いである税理士に任せていて、まったくノータッチでした。
――起業直後、生活できるくらいの給料は得られましたか?
A氏 設立当初は、友人の友人を紹介してもらうなどツテを頼って、小さい仕事はすでに持っていましたが、ギリギリで結構厳しかったです。給料が出ないときもあって、最初の1〜2カ月間は、空いた時間で出会い系サイトのサクラのバイトとかしてましたね。
半年くらいして、ある会社に営業をかけたところ、うまいこといき、その後は定期的に仕事をもらっていました。徐々に軌道に乗って、最終的に1年目で1000万円くらいの売り上げがありました。給料は少なくて、手取りで月額20万円ちょっとくらいでした。