日本の先端技術“から攻める”韓国サムスンに駆逐される日本企業?
判決を報じる8月31日付日経新聞。
サムスングループが新たに進出するのは、水処理の中でもコア技術とされる「浸透膜」の分野。水処理膜は東レ、旭化成、日東電工など日本メーカーが早くから開発を手がけ、技術的にも先行し、現在2000億円余りの世界市場のうち4割前後を占めていると見られる。
しかし今後、地球人口の急増に伴い水資源が不足する中で、開発途上国において、海水の淡水化を始め、水処理技術に対するニーズが急激に高まると予想されている。もっとも浸透膜そのものの市場は、今後10年ほどで1兆円規模と驚くほどの規模ではないが、上下水道などを含めた水処理市場全体では、80数兆円に達すると見られる有望分野である。
サムスンの狙いが浸透膜だけなのか、海水の淡水化プラントといったプラントビジネス、あるいは上下水道管理までを視野に入れているかは現状では不明だが、強敵登場といわざるを得ない。
●日本企業は静観の構えだが…
ライバル出現に、日本の浸透膜関連の各メーカーは、「技術的には1日の長があるので恐れるに足りない」(メーカー関係者)という見方で一致しているが、かつてD—RAMなどをはじめとする多くの産業分野が、様子見を決め込んでいる内に韓国メーカーにしてやられてしまった経緯を見ると、そう安閑としてはいられない気がする。
最近では、薄型テレビ分野における韓国メーカーの急激な勢力伸張が、テレビを「お家芸」としてきたシャープをはじめとする日本メーカーの経営に、深刻な打撃を与えたことは周知のとおりだ。
それにしても、問題はなぜかくも累々と日本の産業が、韓国企業の前になすすべもなく破れてしまうのかということだ。
10年ほど前には、家電産業などにおいて「韓国企業は日本製品のコピーしかつくれない」といわれ、テレビなどはいったん進出した日本市場から撤退を余儀なくされたことがあるほどなのだ。
韓国企業の躍進のベースには、もちろん彼らの頑張りがあるのだが、それ意外にも大きく3つほど理由が考えられる。
一つは、経済用語で言う「後発効果」である。後発効果とは、先進国あるいは先発企業が試行錯誤を重ね、時間とコスト、そして智恵を絞ってようやく手に入れた成果を、後発国あるいは後発企業が先行者の努力や多大な投資を横目に、結果だけを見て効率的に量産化し、先発企業に追いつくことを指す。
韓国企業が一時期、日本製家電製品を買い込み、バラバラにしてその技術を手中にしたといわれているが、倫理的行為かどうかは別にして、それもまた「後発の優位性」を示すものではある。ともかく韓国や台湾、あるいは中国メーカーの技術面の伸張は、このことである程度説明がつく。開発コストをかけなくてすむメリットもある。