電撃的スマホ参入のVAIOは、どう戦うのか?市場破壊し、業界トップになる戦略を検証
ここで4P戦略を掘り下げていくことにしましょう。
(1)プロダクト戦略
プロダクト戦略においては、低コストが実現できれば多機能のスマートフォンを目指すこともできますが、最低限顧客が必要とする機能を備えたプロダクトでも構わないでしょう。そのスマートフォンに、VAIOで培った斬新なデザインを加えて差別化していけばいいのです。
また、製品以外からの収入も重要な鍵を握ります。例えば、シャオミは自社開発したユーザーインターフェースを端末に搭載し、広告を配信して売り上げにつなげています。VAIOの場合も、シャオミのように独自のエコシステムを築いてキャッシュポイントを複数持つなど、新たなビジネスモデルの導入も必要となってくるでしょう。
(2)プライス戦略
破壊的イノベーションを成功に導くためには、圧倒的な低価格が鍵を握ります。例えば、シャオミのスマートフォンはiPhoneと同等の性能を備えながら、5分の1という低価格が人気の秘密です。ただ、日本市場においては現状No.1ブランドのiPhoneでさえ、“実質無料”というプライス戦略が展開されています。この状況を踏まえれば、通信料と端末を含めて圧倒的な低価格に抑えることができなければ、インパクトを与えることは難しいといえるでしょう。その意味で低価格の通信を提供する企業と提携するか、もしくは自身が低価格の通信を提供する企業となり、通信料を含めたトータルで、どの程度既存のスマートフォンとの価格差を広げられるかがカギを握ることになりそうです。
(3)プレイス戦略
クリステンセン教授によれば、破壊的イノベーションでは、既存の流通網ではなく、まったく新しい流通網が活用されるとされています。低価格を武器に市場を破壊する破壊的イノベーションでは、流通業者が得られるマージンも少なくなり、既存の流通業者が破壊的イノベーターの製品を取り扱うメリットがないからです。実際に、中国のスマートフォン市場で破壊的イノベーションを成功させたシャオミは、既存の小売店を使わずにインターネット直販に限定するという、これまで業界ではあまり利用されてこなかった新たな流通網で成功を収めています。
そこでVAIOも独自の流通網を築いていく必要があります。それが、日本通信などのMVNO事業者なのです。MVNO事業者とは、NTTドコモなどの通信キャリアからまとめて回線を仕入れ、小分けにして安い価格でユーザーに販売する業者のことです。例えば、最も価格の安い企業であれば、NTTドコモの回線を1GB(ギガバイト)月当たり660円で提供しています。価格戦略との関係もありますが、このような格安SIMを提供するMVNO事業者と組めば、Win-Winの関係も築くことができるというわけです。