(東洋経済新報社/4月14日号)
新会社は産革機構が70%、ソニー、東芝、日立がそれぞれ10%ずつ出資した。中小型液晶はスマートフォン(高機能携帯電話)向けなどで需要が拡大している分野だ。3社統合の表向きの理由は、日本の電機産業が総崩れするなか、国が早期に全面支援することで数少ない成長事業を堅守するためだ。ただ、日立関係者は「内情は複雑」とささやく。
「もともとソニーと東芝の事業統合で日立は台湾メーカーとの提携に動いていたが、経産省が技術流出を嫌い、3 社での統合を主導しました。事業の浮き沈みが大きいうえに、台湾や韓国勢に追われ、技術優位が小さくなっている事業だけに日立も渋々従ったのです」
つまり、統合に合意した時点から足並みは完全にばらばらなわけだが、3社が統合したことで、規模だけは大きくなり、JDの中小型液晶の世界シェアは約20パーセント、堂々の首位に立つ。4月2日に都内で開かれたJDの事業運営に関する説明会では、社長に就いた大塚周一氏が「グローバルリーディングカンパニーになる」と力強く宣言した。
会見中、思わず顔が引きつった大塚社長
ところが前のめりになる国や大塚社長の姿勢に対して、報道陣からは冷ややかな質問が相次いだ。「技術を持っていながら、テレビなどに使う大型パネルではなぜ負けたのか」「強みはいったいなんなのか」大塚社長は淡々と答えていったが、その中で表情を引きつらす質問があった。
「エルピーダメモリのようにならないのか」――。
2月末に経営破たんしたエルピーダは日立製作所、NEC、三菱電機の半導体事業の統合会社。大手電機の事業部門の統合会社であることや、韓国勢に押されていた状況も重なる。設立当初「日の丸半導体」と呼ばれていたことも、新会社とかぶる。親会社3社が「業績の触れ幅が大きい事業を切り離せて、胸をなで下ろしているところもソックリだよ」(金融業界関係者)という実に皮肉な類似点すら備えている。
新社長はエルピーダ坂本社長のイエスマン?
加えてエルピーダを彷彿とさせるのが、大塚社長の経歴だ。大塚社長はエルピーダの前COO(最高執行責任者)でもあった。米テキサス・インスツルメンツ(TI)、ソニーを経た後、TI時代の先輩であるエルピーダ・坂本幸雄社長から請われてエルピーダに入社した。「坂本さんは自分と合わない役員を次々と追い出した。大塚さんがCOOまで上り詰めたということは、それだけ坂本さんのイエスマンだった証拠」(エルピーダ元社員)との声も聞こえる。技術には明るいと評判だが、経営手腕を疑問視する声も少なくない。