14年12月期の連結決算(9カ月決算)の売上高は1兆2242億円、純利益は1431億円であり、前年の同一期間と比較すると8%の増収、3%の最終増益となった。だが、15年同期には一転して減収減益になる。主力の統合失調症治療薬「エビリファイ」が14年10月に欧州で、15年4月に米国で特許切れとなり、大幅な販売減を見込むためだ。
エビリファイは1987年に大塚製薬が開発した新しいタイプの抗精神薬だ。統合失調症の患者を対象にした臨床試験を90年11月に開始し、有用性が確認されたことから06年1月に製造販売承認を得た。幻覚・妄想、感情的引きこもりが改善するという。海外では欧米をはじめ70カ国以上で承認されている。
最大市場は米国だ。米国では統合失調症だけでなく、双極性障害(躁、うつ)、発達障害(自閉症等)の治療など、適応症を順次増やしてきた。米医療関連情報サイト「メドスケープ」がまとめた13年度(12年10月~13年9月)の全米の薬剤売り上げベスト100で、エビリファイは1位(12年度は11位)、売上高は64億ドル(当時の為替相場で換算して約6400億円)。日本の薬品メーカーとして、史上初の快挙だ。
大塚製薬はエビリファイの米国販売について、米大手製薬会社ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)に委託してきた。09年までは米国売り上げの65%がブリストル社の取り分となっていた。09年4月に契約を更新し、大塚製薬は10年以降の取り分を大幅に増やすことに成功した。15年4月に米国で特許が切れるまで、大塚製薬の取り分は年々増えていった。
大塚HDの14年12月の連結決算によると、エビリファイの売上高は5074億円と、前年同期間に比べて11%増えた。米国での売上高は14%増の4165億円で、エビリファイの売上高の82%を米国市場で上げたことになる。大塚HDの業績は、エビリファイの米国販売に大きく依存しているのである。
そのエビリファイの特許が、15年4月に米国で切れる。15年12月期のエビリファイの売上高は2820億円と前年同期と比べると実質57%減る見通しで、利益率も高かったため、当期利益は800億円と実質で6割減る。
しかも、エビリファイの売り上げの落ち込みが、大塚HDの想定範囲内で済むという保証はどこにもない。米国では、特許が切れると、同じ成分のジェネリック医薬品(後発薬)への切り替えが一気に進む。特許が切れた年に、売り上げが8~9割減るケースも珍しくはない。