次に、「スマOFF」や現在の格安スマホ業界について、ITジャーナリストの三上洋氏は次のように分析する。
「それまで違う畑で事業を行っていた企業が格安スマホ市場に参入するうま味は、単純に言えば通信事業はユーザー数の一定のシェアが取れれば毎月安定した収益が見込める点でしょう。しかし、ブックオフの参入には、また別の意図があると推察しています。ブックオフがこれまでの事業の柱としていたのは本やCDの中古売買ですが、残念ながら本やCDといった物理的なメディアの需要は徐々に減っているのが現状です。すぐに事業規模が縮小するということはないと思いますが、企業としての将来を考えた際には、新しい柱を作る必要があるのでしょう。その一環として白羽の矢が立っているのが中古携帯電話の売買であり、その中古市場を活況化させるための施策として『スマOFF』を始めたのではないでしょうか」
つまり、ブックオフは通信事業への転換を目的として格安スマホに参入したわけではなく、これまで培ってきた中古売買事業において、携帯電話というジャンルを今以上に開拓するための一手と位置づけていると考えられる。
いずれにしてもブックオフが格安スマホに参入したのは、市場としてまだまだ伸び代があると同社が判断しているからだろう。
50代以上のガラケー移行層を取り込んだ格安スマホ
そもそも格安スマホは、昨年4月、イオンがスマホとSIMカードをセット販売したのを皮切りとしてブームに火が付いたわけだが、そのイオンスマホは昨年だけで約4万台を販売している。そして驚くことに購入者の年齢構成は、約5割が50代以上だという。これはNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの大手3社などの既存携帯電話事業者(キャリア)の年齢構成と比べ、非常に高い数字である。
このイオンスマホの傾向について、三上氏は次のように読み解く。
「50代以上には、まだガラケーを使い続けている人が多く、大手キャリア3社はそういった層をいかにスマホに移行させるかを近年の課題としていたはずです。ただ、高齢層がガラケーの移行先として選んだのは大手3社ではなく、格安スマホだったということでしょう。もちろん大手3社のスマホに替える人もいるでしょうが、格安スマホのほうが50代以上のユーザーのスマホ移行需要にマッチしているといえます。やはり大手3社のプランはまだ割高のイメージが強く敬遠されがちで、月々1000~3000円程度で利用できる格安スマホは魅力的です。通話のほかは、孫とのメッセージのやり取りや写真、動画を受け取るといった程度にしか携帯電話を使わない高齢層の心を動かしやすい低価格だったのでしょう」