●クーデター決行
14年7月に会長兼社長となった勝久氏は積極的に広告宣伝を展開して売り上げ拡大を狙うが、14年12月期決算では減収減益。4億200万円の営業赤字となる。社長復帰のチャンスを虎視眈々と狙っていたといわれる久美子氏は、勝久氏が招いた三井住友銀行出身者でホウライ会長の社外取締役、中尾秀光氏が退任したのをにらみ、今年1月28日、クーデターを決行する。
「実は14年12月16日、ききょう企画から中尾氏だけに対し、勝久氏のパワーハラスメントや暴言行為、売り上げに結びつかないような広告宣伝費投入を黙認したという理由で、7億5100万円の支払いを求める訴えが提訴されたのです」(勝久氏の側近)
中尾氏はこれがきっかけで退任したといわれている。当時の取締役は勝久氏、勝之氏、久美子氏、娘婿の佐野春生氏、渡辺健一氏、久美子氏の出身大学である一橋大学の教授で社外取締役の阿久津聡氏、同じく社外取締役で弁護士の長沢美智子氏、中尾氏の8人。中尾氏が抜ければ、7人のうち阿久津氏と長沢氏は久美子氏が社長になってから招聘した人物だ。そして7月の久美子氏解任では勝久氏についた佐野氏が久美子氏の側につき、形勢は逆転。4対3で勝久氏は社長を解任され、久美子氏が社長に返り咲いた。
そしてすかさず久美子氏は2月13日、新経営体制を決議し、実質、勝久氏の解任を提案した。これに対抗するかのように提出されたのが、前述した勝久氏側の株主提案だ。久美子氏は2月26日の会見で記者からコーポレートガバナンスについて質問を受けると「(次の世代への)転換をいかにスムーズに進めるか、遅くなると、転換するのは難しく今がぎりぎりのタイミングだ」と答えている。ここには「クーデター」への決意が込められている。
今後は、委任状争奪戦(プロキシファイト)が展開され、株主総会で戦うことになる。勝久氏は18%の株式を所有し、久美子氏はききょう企画の保有する株式10%を握り、さらに10%の株を保有する米国投資ファンド、ブランデス・インベストメント・パートナーズが支援するとみられている。今のところは互角の戦いで、その他の株主がどちらにつくのか。
勝久氏よりも久美子氏の経営手腕を高く評価する声もあるが、久美子氏も赤字を止血し、なんとか黒字化しただけにすぎない。中期経営戦略でも従来の会員制を批判する一方、IKEAやニトリと差別化できるような成長戦略を描き切れているわけではない。果たしてどちらに軍配が上がるのか。天王山は3月27日の株主総会となる。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)