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片山修「ずたぶくろ経営論」

ソニーに「夢」「感動」を期待するのは、もうやめにしよう 10年超も構造改革の異常さ

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

 考えてみれば、「夢」ある企業の代表としてソニーが輝いていたのは、60~70年代である。多くの日本人が共同創業者の井深大氏と盛田昭夫氏が育てた「トランジスタラジオ」や「ウォークマン」などのAV製品に「夢」を託し、みんなで「感動」を共有してきた。OBやソニーとともに時代を歩いたシニアにとってみれば、まさしく「僕らのソニー」である。ノスタルジーにひたりたいのはよくわかる。

 しかし、時代は変わった。韓国など新興国メーカーが台頭するなかで、エレクトロニクス事業の看板を下ろさざるを得なくなった今となっては、かつての「夢」や「感動」を追うのはしょせん無理がある。はっきりいって、「夢」や「感動」は、一昔、二昔前のソニーの企業像である。それは、もはや幻想でしかない。

 現に今回、「成長牽引領域」に位置づけられたのは、デバイス、ゲーム、映画、音楽である。かつて「夢」を託し、「感動」を求めた、「夢」にあふれたエレクトロニクス商品群とは大きく様変わりしている。

 ソニーは、大胆な事業戦略の転換によって生き残りを図るしかない。それは、「夢」や「感動」をもたらすソニーとは大きくかけ離れているかもしれないが、ソニーが復活を遂げるためには、やむを得ない選択ではないのではないだろうか。吉田氏が、いかなる次の一手を打つのか注目される。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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