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一方、久美子氏の戦略は「気軽に入れる店づくり」「中価格帯への注力」など、従来のやり方を否定し、新たな方向性を示しており、正しいように思えます。しかしながら裏を返せば、これまでの大塚家具の強みを否定することにもつながり、「どこでどのように他社との差をつくるのか」という点が大きな課題として残ります。
歴史を振り返れば、安売りで参入してきた小売店が時を経て、高付加価値化に注力し、脱安売りに転換している事例は数多く存在しています。身近な例では、100円均一ショップでも300円、500円といった商品が販売されていますし、低価格を売りにしてきたPB(プライベートブランド)商品においても、高価格なPBが誕生してきています。よって、今後、ニトリやIKEAが中価格帯に進出する可能性は十分にあると思います。また、「高級家具といえば大塚家具」というイメージの低下による既存顧客の離反など、「二兎追うものは一兎をも得ず」という結果にならないか危惧される面もあります。
筆者がいろいろな企業を訪問して感じることは、「何をするか」は大切ではあるものの、「いかにやり抜くか」の重要性です。ここ数年、取り組んでいる「高く売る戦略」に関する研究でも、トップのリーダーシップや全社的モチベーションの高さなどの重要性を痛切に感じています(詳細は拙書『「高く売る」戦略』<同文舘出版>参照)。
今回のような事態に陥ってしまった大塚家具において、こうした企業にとって重要な土台をいかに再構築するのかという点が、最も気になるポイントです。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)
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